なぜ初留釜と再留釜は、大きさも数も揃っていないのか——一度目でおよそ3分の1に減る液体と、帳尻を合わせる蒸溜所の設計
スチルハウスに並ぶ銅の釜は、初留釜と再留釜で大きさも数も揃っていないことが多い。もろみがローワインになると液体はおよそ3分の1に減り、再留には前回の戻り分が加わり、時間もかかる。グレンゴイン、マッカラン、タリスカー、そして再留釜のほうが大きいラガヴーリンから、その帳尻の合わせ方を読む。
蒸溜所の見学でスチルハウスに入ると、銅の釜が並んでいます。よく見ると、初留釜と再留釜の片方がひとまわり小さかったり、片側だけ数が多かったりします。グレンゴインは大きな釜1基に小さな釜2基。マッカランは12基と24基です。
なぜ揃えないのでしょうか。この記事では、二つの釜がそれぞれ何をしているのかを押さえたうえで、大きさと数が揃わない理由と、その「揃わなさ」を逆に味づくりに使っている蒸溜所を見ていきます。
二つの釜は、別の仕事をしている
スコッチのモルトウイスキーの多くは、ポットスチルで2回蒸溜されます(なぜ2回なのか)。
1回目を受け持つのが**初留釜(ウォッシュスチル)**です。入れるのは発酵を終えたもろみ(ウォッシュ)で、アルコール度数は7〜8%ほど。ここから出てくる液体を「ローワイン」と呼び、度数はおよそ21〜30%に上がります。
2回目を受け持つのが**再留釜(スピリットスチル)**です。ローワインをもう一度蒸溜し、出てくる順に前留・中留・後留に分けて、真ん中の中留だけを原酒として取ります(カットの話)。取り分けた中留の度数は、平均で70%前後です。
液体は、一度目でおよそ3分の1になる
大きさが違う理由の一つ目は、単純な割り算です。
度数8%のもろみが、度数24%のローワインになったとします。アルコールの量がほぼそのまま移ったとすれば、液体の量は3分の1になる計算です。実際の資料でも、ローワインの量は元のもろみの4分の1から3分の1ほどとされています。
一度目で水分の大半が「ポットエール」と呼ばれる残液として釜に残るので、二度目に運ぶ液体はぐっと少なくなる。だから再留釜は、初留釜より小さくて足ります。
ただし、再留釜には「戻ってくる液」もある
話はそこで終わりません。再留で切り捨てた前留と後留は、捨てずにためておき、次のローワインと一緒に再留釜へ戻すのが普通です。再留釜が受け持つのは「ローワイン+前回の戻り分」なのです。
さらに、再留は中留を見極めながら進めるぶん、急げません。英国の酒類メディア Difford's Guide によれば、初留はおよそ4〜6時間、再留はおよそ6時間かかるのが一般的だといいます。再留釜の1回が長くかかれば、そのぶん再留側の釜の数や大きさで補う必要が出てきます。
そこで蒸溜所は、初留側から出てくる量と、再留側が受け入れる量とが釣り合うように設計します。同メディアは、初留釜1基の産出で再留釜1基がちょうど満ちる組み合わせもあれば、初留釜2基で再留釜1基を満たす組み合わせもあると説明し、釣り合っていない設備では、蒸溜のサイクルが落ち着くまで何週間もかかることがあると書いています。大きさや数が揃っていないのは、帳尻を合わせた結果なのです。
数で帳尻を合わせる蒸溜所
スコットランドでは初留釜と再留釜を同じ数だけ並べる蒸溜所が多数派ですが、数を変えて釣り合いを取るところもあります。
グレンゴインは、初留釜1基に再留釜2基。1966年の改修で1基を足して、この3基の形になりました。初留釜は容量16,620リットルで1回に入れる量は12,666リットル、再留釜は容量5,000リットルで3,800リットルずつ。釜を容量いっぱいまで満たさないのは、ごく一般的なやり方です。そのうえでグレンゴインは、ごくゆっくり蒸溜することで知られています(蒸溜はハイランド、熟成はローランドという話)。

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