George Dickel
テネシー州タラホマ、カスケード・ホロウの渓流沿いに立つ、テネシー・ウイスキーの二大巨頭のひとつである。1818年にドイツで生まれたジョージ・ディッケルは、ナッシュビルで靴店を営んだのち1861年に酒の商いへ転じ、周辺の蒸留所から樽で買い付けて卸す会社を興した。1958年、コーヒー郡での蒸留解禁を受けてシェンリー社のラルフ・ダップスがカスケード・ホロウ蒸留所を再建。仕込みにはカスケード・ブランチの水を今も用いる。原酒を4℃まで冷やしてから木炭で濾すリンカーン・カウンティ・プロセスが最大の個性で、この冷却濾過がなめらかで洗練された酒質を生む。「Whisky」とeを抜いて綴るのは、スコッチに並ぶ品質への自負の表れだ。
最大の特徴は、リンカーン・カウンティ・プロセスと呼ばれるサトウカエデの木炭による濾過(チャコール・メロウイング)だ。ディッケルは原酒をまず4℃まで冷やしてから、3〜3.7メートルの厚さの木炭を詰めたバットで数日かけて濾す。この冷却を挟む工程が同社独自の点で、より滑らかで洗練されたスピリッツを生むという。濾過後に55%で樽詰めし、新樽で熟成させる。テネシー・ウイスキーならではの、丸くまろやかな口当たりが身上だ。
ジョージ・ディッケルは1818年、ドイツのグリューンベルクに生まれた。ナッシュビルで約20年靴店を営んだのち、1861年に酒の商いに転じ、1860年代後半には周辺の蒸留所から樽単位で買い付けて卸す会社を興した。彼のブランドは高品質で知られ、スコッチに並ぶ自負から「Whisky」とeを抜いて綴った。1958年、コーヒー郡での酒類製造が合法化されると、シェンリー社のラルフ・ダップスが旧蒸留所から約1マイルの地にカスケード・ホロウ蒸留所を再建した。現在はディアジオが所有する。
蒸留所はテネシー州タラホマ、カスケード・ホロウの渓流沿いに立つ。仕込みには今もカスケード・ブランチの清冽な水を用いる。石灰岩に濾された良質な水と、テネシーの温暖で寒暖差のある気候が、木炭濾過を経た原酒の熟成を穏やかに進める。渓谷を吹き抜ける風が木炭焼成の煙を運び去るという立地も、造りの一部となっている。
定番の「ジョージディッケル No.12」を軸に、若い「No.8」、高酒質の「バレル セレクト」、そして近年評価を高める「ボトルド イン ボンド」やブレンダー、ニコール・オースティンによるシリーズを展開する。ジャックダニエルと並ぶテネシー・ウイスキーの雄として、独自の滑らかさで存在感を放つ。

この蒸留所が属する地域
トウモロコシを主原料とするバーボンウイスキーの本場。原料の51%以上がトウモロコシで、内側を焦がした新樽で熟成させることが法律上の条件となっている。ケンタッキー州が生産の中心地で、テネシー州のジャックダニエルズは木炭濾過(チャコール・メローイング)を経る独自製法「テネシーウイスキー」を名乗る。近年は小規模クラフト蒸留所が全米で急増している。
アメリカを深掘りする →地理ではなく味わいで繋がる、別の産地の蒸留所。