ウイスキーは宅配便で送れるのか——ビールやワインと同じつもりで出すと、伝票と航空便でつまずく
ウイスキーを人に送るとき、ビールやワインとは手続きが変わる。24度と70度という二本の線、伝票に書くべき事項、そしてウイスキーは海外へは郵便でも宅配便でも送れないという結論を、公式の案内と法令から確かめた。
お中元にウイスキーを一本。単身赴任の友人に、気に入った銘柄を送ってやりたい。海外の友達から「日本のウイスキーを飲んでみたい」と言われた。
どれも、やろうと思えばすぐできそうな話に見える。ところが伝票を書く段になると、手が止まる。品名は「ウイスキー」でいいのか。そもそも、お酒って宅配便で送っていいんだったか。
結論から言うと、国内なら送れる。ただしビールやワインを送るときとは、手続きが少し変わる。そしてウイスキーは、海外へは郵便でも宅配便でも送れない。分かれ目になっているのは、度数だ。
24度と70度——アルコールに引かれた二本の線
アルコール飲料は、輸送の世界では引火性液体になりうる。国連番号3065、クラス3。ただし全部が全部そう扱われるわけではなく、区分は三段になっている。
- アルコール分(エタノール)が24容量%以下:危険物として扱われない
- 24%超70%以下:UN3065に当たるが、1容器5リットル以下であれば、貨物としては危険物規則の適用外
- 70%超:危険物としてそのまま規制される
ビール、ワイン、日本酒は一段目に収まる。ウイスキーはほぼ例外なく24度を超えるので、二段目に乗る。40度が標準で、日本の低価格帯でも37度だ。
つまり700mlのウイスキーは、二段目の「適用外」の枠に収まっているから運べる。ここを押さえておくと、この先に出てくる数字——伝票に書かされる5リットル、宅配便の70度上限——が、すべて同じ一本の理屈から出ていることが分かる。ただし「適用外」は「何も書かなくていい」という意味ではない。
遠方に送ると、1〜4日遅れて届くことがある
24度を超えると、まず影響が出るのが航空機だ。
日本郵便は、航空搭載地域あてのゆうパックについて「アルコール度数が24度を超えるアルコール飲料は航空機による輸送ができず、1日~4日程度配達が遅れることがあります」と案内している。飛行機に載せないぶん、陸路・海路に回るからだ。
ヤマト運輸は該当区間を具体的に挙げていて、沖縄⇔他の都道府県、北海道⇔九州・中国・四国。ただし条件の書き方が少し違い、「アルコール度数24度超〜70度以下かつ5リットル超」の荷物が航空搭載できず、配達が1日以上遅れる場合がある、としている。
食い違うのは航空搭載の条件だけだ。ヤマトは5リットル超に限って外していて、これは先ほどの適用除外(1容器5リットル以下は規則の対象外)をそのまま運用に落としたもの。日本郵便は容量を問わず24度超を一律で航空機から外している。規則が許す範囲より、一段厳しく引いているわけだ。
どちらが正しいという話ではなく、運用は会社ごとに違う。北海道や沖縄、離島に贈り物を送るなら、日数の見込みは、出す前に窓口で確認したほうが確実だ。「お中元が着く日」を約束してしまったあとでは遅い。
伝票の品名に「ウイスキー」とだけ書いてはいけない
これが、いちばん見落とされている点だと思う。
日本郵便は、24度を超える酒類を送るとき、品名欄にこう書くよう求めている——「ウィスキー(アルコール度数45度、0.7リットル×3本)」(表記は原文ママ)。酒名に加えて、24度超70度以下であること、そして1容器あたりの容量が5リットル以下であることが読み取れる書き方をせよ、ということだ。さきほどの適用除外の条件を、送り主に自分で書かせている形になる。24度以下の酒なら「焼酎(アルコール度数20度)」のように度数を添えるだけでいい。
ヤマト運輸も、送り状の品名に「具体的な品名とアルコール度数・容量」を記載するよう案内している。
面倒な決まりに見えるが、これは運送会社の都合だけの話ではない。法律上の義務でもある。2019年4月1日に施行された改正商法では、荷送人(=送る人)は、運送品が引火性・爆発性その他の危険性を有するときは、引き渡しの前に運送人へその旨と品名・性質その他の安全な運送に必要な情報を通知しなければならないと定められた(商法572条)。通知を怠って損害が生じれば、賠償を求められうる。
「品名:お酒」とだけ書いて出す、あるいは「食品」と書いてごまかす——これは節約でも時短でもない。単に、リスクを自分で引き受けているだけだ。度数と容量を書く。それだけで済む。
70度の壁——その先が「ハズマット」と呼ばれる
二本目の線に戻ろう。ゆうパックで送れるのはアルコール度数70度以下まで。郵便物・ゆうメール・ゆうパケットはさらに厳しく60度未満まで。ヤマトの宅急便も70度以下だ。三段目に入った瞬間、宅配便の口は閉じる。
とはいえ、ウイスキーで70度を超えるものはまずない。スコッチは慣例として63.5%前後で樽に詰められ、冷涼で湿ったスコットランドの熟成庫では、水よりアルコールのほうが速く抜けて度数はじりじり下がっていく。市販のカスクストレングスがたいてい60%前後に収まるのは、そのためだ。バーボンの事情は少し違うのだが、それは後述する。
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