クライヌリッシュ14年 vs オールドプルトニー12年——似ていない理由は、二軒が残した「消えるはずのもの」がまるで違うから
同じ北ハイランド東岸、どちらも「潮っぽい」「オイリー」と語られる二本。だが海でも樽でも差は説明しきれない。残るのは、捨てるはずのタンクの底と、更新されるはずの設備一式——二軒が手放さなかったものの違いだ。
スコットランド本土の北東、海に向いた斜面と港町に、よく似た評判を背負う二本がある。サザーランドのブローラにあるクライヌリッシュの14年と、さらに北、ケイスネスの港町ウィックに立つオールド・プルトニーの12年だ。
どちらも「潮っぽい」と語られる。どちらも「オイリー」と語られる。産地区分はどちらもハイランド。海沿いのモルトを探している人の候補には、たいてい両方が並ぶ。
ところが実際に飲み比べると、この二本はあまり似ていない。ではどこで分かれるのか。海と樽を順に当たっていくと、いちばん確かな手がかりとして残るのは「蒸溜所が手放さなかったもの」だった。そしてその中身が、二軒でまるで違う。
「海のそばだから」は、説明にならない
オールド・プルトニーは自ら「マリタイム・モルト(海のモルト)」を名乗る。クライヌリッシュのほうも、ディアジオが公開している公式のテイスティングノートに「概して海を思わせる(maritime)」という言葉が入る。海のイメージは、どちらにもついて回る。
ただし、海辺の熟成庫の潮が樽を通って中身に移る、という説明は、いまでは支持しにくい。塩の分子がオーク材の導管をくぐって酒に入れるのか——ここに疑問符がつくからだ(→なぜ海沿いの蒸留所のウイスキーは「潮の香り」がするのか)。潮気の正体が香気成分と連想の合わせ技なのだとすれば、「海のそばに建っているから」の一言は、二本の差の説明にはならない。
樽の情報だけでは、結論が出ない
では樽か。オールド・プルトニー12年は、公式が「すべて空気乾燥させたex-バーボン樽で熟成」と明言している。一方のクライヌリッシュ14年は、公式サイトが樽の構成を公開していない(複数の二次資料はバーボン樽とシェリー樽と記すが、蒸溜所側の言明ではない)。
もちろん、樽が効かないという話ではまったくない。同じオールド・プルトニーでも、セカンドフィルのバーボン樽にファーストフィルのオロロソシェリー樽を重ねる15年は、全量ex-バーボンの12年とは別の顔になる。樽は間違いなく大きな変数だ。
ただ、片方の構成が公開されていない以上、樽だけで結論を出すことはできない。熟成年数も14年と12年で違う。そこで、もう一方の、はっきり分かっている材料を見てみたい。樽に入る前——蒸溜所の中にある設備と慣行だ。面白いのは、二軒がまったく違うものを、それぞれ「普通なら消えるはずのもの」として抱え込んでいることである。
クライヌリッシュ:捨てるはずの、タンクの底
クライヌリッシュのワクシー(蝋っぽい)な質感は、設備の「汚れ」から来ている。
再留のときに切り分けられる前留(フォアショッツ)と後留(フェインツ)は、専用のタンクに貯めて次の再留に戻される。このタンクの底には油分がゆっくり沈殿していく。普通は年に一度の休止期間に洗い流すものだが、クライヌリッシュではそれを綺麗にしたところ、あの質感が消えてしまった。以来この蒸溜所は、清掃時に沈殿物をいったん取り出し、洗い終わってからまた戻している(→なぜクライヌリッシュは「蝋の味がする」と言われるのか)。
面白いのは、設備そのものは古風でも何でもないことだ。ウォッシュスチル3基・スピリットスチル3基の計6基、年産480万リットル規模の大きな蒸溜所で、冷却は主流のシェル&チューブ式。銅に触れる面積が広く、酒をクリーンに磨く方向の設備である。
クリーンに磨く現代的な設備を持ちながら、捨てるはずの澱だけは次の蒸溜に持ち込む。この慣行は、記録に残るかぎりほぼクライヌリッシュ固有のものだ。

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