タリスカー10年 vs ハイランドパーク12年——選び分けの決め手は煙ではない。樽と酒質が性格を作り、度数が濃さを決める
同じ「島の、ほどよく煙る一本」として並ぶタリスカー10年とハイランドパーク12年。実は煙の量は選び分けの手がかりにならない。効いているのは樽・酒質・度数で、それぞれ担当する場所が違う。
棚に並ぶ2本。どちらも島で造られ、どちらも「アイラほど強くない、ほどよいスモーキー」と紹介される。価格帯も近い。ではどちらを買えばいいのか——タリスカー10年とハイランドパーク12年は、ウイスキーを飲み始めた人が最初に迷う組み合わせのひとつだ。
この記事では、2本の違いを「島の空気」ではなく、造り手が選んだ設計として整理する。先に結論を書いておく。この2本を分けているのは煙の量ではない。味の方向を決めているのは樽と酒質で、度数はその方向をどれくらいの濃さで届けるかを決めている。役割が違うのだ。
煙の量は、選び分けの手がかりにならない
まず、よくある比べ方をひとつ外しておきたい。「どちらがピートが強いか」という問いは、この2本ではあまり役に立たない。
ハイランドパークは、いまも自社の麦芽小屋を動かしている数少ない蒸溜所のひとつだ。オークニー諸島のホビスター・ムーアから切り出したピートで、自分たちの麦芽を焚く(なぜ一部の蒸溜所はフロアモルティングを続けるのか)。
オークニーのピートは、アイラのそれとは中身が違う。島に木がほとんど育たないため、堆積しているのは主にヘザーや苔で、木質の少ない層になる。ここから立つ煙は、薬品的というより香ばしい方向だと説明されることが多い。
ただし、自社で焚くのは使う麦芽の全部ではない。公表されている割合は資料によって幅があるが、おおむね2割前後とされ、残りは本土から買う無ピートの麦芽だ。つまり濃く焚いた麦芽を、焚いていない麦芽で薄めている。
タリスカーは1972年に自社のモルティングをやめており、いまは親会社ディアジオのグレンオード製の麦芽を買う。フェノール値は20ppm前後とされるが、この数字は資料によって振れるうえ、無ピート麦芽を併用しているとする資料もある。
はっきり言えるのは、ハイランドパークは自分の島で焚いた麦芽を持っていて、タリスカーは持っていない、という調達の違いだ。そこから先の「どちらが濃いか」は、公表値がそもそも噛み合っていない。しかもppmは麦芽を測った値であって、瓶の中の感じ方とは一致しない(ウイスキーのppm・フェノール値とは何か)。煙の数字で選び分けようとすると、ここで行き止まりになる。
タリスカー側の、ちぐはぐな蒸溜設備
蒸溜の設備で個性を語れるのは、この2本のうちタリスカーのほうだ。ハイランドパークの重心は、次の節で見る樽にある。
タリスカーのスチルハウスは5基編成——ウォッシュスチル2基にスピリットスチル3基という、いまでは珍しい組み合わせだ。1928年までここが三回蒸溜を行っていた時代の名残とされる。
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