ウイスキーは、いま余っている——スチルの火を落とした蒸溜所と、それでも棚の値段がすぐには下がらない理由
ジムビームは主力蒸溜所の蒸留を2026年いっぱい止めている。スコットランドでも減産が相次いだ。この十年言われ続けた「品薄」は終わったのか、そして棚の値段は下がるのか——数字で確かめる。
「山崎が手に入らない」「あのアイラモルトがまた値上がりした」——この十年、ウイスキーの話題はほとんど品薄と高騰でできていた。
ところが2026年、その前提が揺らいでいる。1月1日から、ジムビームがケンタッキー州クラーモントにある主力の蒸溜所で、蒸留を1年間まるごと止めているのだ。
理由は、売れないからだけではない。同時に、造りすぎてもいた。
ケンタッキーに積み上がった1,610万樽
ケンタッキー蒸溜業者協会(KDA)によれば、州内の倉庫で熟成中のバーボンは1,610万樽。バーボン以外のスピリッツを含めると1,710万樽で、いずれも過去最高だ(2025年1月1日時点の申告にもとづく)。州民ひとりあたり3樽を超える計算になる。
ケンタッキーは、熟成中の樽そのものに課税する世界で唯一の場所だ。KDAはこの樽税の負担が2025年に7,500万ドル、前年比27%増、5年で163%増になったとしている。売れ行きが鈍るなかで在庫が積み上がれば、寝かせているだけで費用が膨らむ。もっともこの税は2023年に段階的廃止が決まっており、2026年1月から課税対象が年4〜7%ずつ縮んで、2043年1月に非課税となる。
ジムビーム——所有するのはサントリーグローバルスピリッツだ——は、止めているあいだに設備へ投資すると説明している。瓶詰め、倉庫、ビジターセンターは動き続け、蒸留も同じ敷地内の小規模蒸溜所とボストンのブッカー・ノー蒸溜所で続く。閉鎖ではなく、蛇口の開き具合を変えたということだ。

大西洋の両側で、スチルの火が落ちた
火を落としたのはジムビームだけではない。
ディアジオは2025年9月、スコットランドのティーニニックと、アメリカのバルコネス(テキサス)、カスケードホロウ(テネシー)で、蒸留と樽詰めを2026年6月まで一時停止すると発表した。理由は「その拠点で造る量が計画より前倒しで進んでいる」から。バルコネスでは17名の雇用が失われている。
LVMH傘下のグレンモーレンジィも数か月にわたって蒸留を止めたと2025年12月に報じられている。再開は2026年春の見込みとされたが、その後の再稼働は公表されていない。

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