ウイスキーの「金賞」は誰が決めているのか——日本の品評会TWSCで、出品594アイテムのうち金賞以上は300。ちょうど半分だった
店頭で見かける金色のシール。日本にもTWSCという品評会があり、銘柄を伏せた採点で賞が決まる。ただし1本を飲むのは8〜10人で、2026年は出品594アイテムの半分に金賞以上がついた。最高金賞との違いまで、仕組みから読み解く。
酒屋の棚で、首から金色のシールを下げたボトルを見かける。「最高金賞」「Gold」——気にはなるが、ではその金賞は、誰がどうやって決めたのか。
「世界一」を名乗る国際品評会の仕組みは別の記事で整理した。ここで取り上げるのは、日本にある審査会——**TWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティション)**だ。公開されている審査要領と受賞結果をたどると、シールの読み方はかなり具体的になる。
2019年に始まった、日本の審査会
TWSCの初開催は2019年。主催はTWSC実行委員会で、実行委員長はウイスキー評論家の土屋守氏が務める。運営の母体は、ウイスキー検定やコニサー資格を手がけるウイスキー文化研究所だ。
2026年で8回目を数え、主催者はこれを「日本唯一、アジア最大級の蒸留酒コンペティション」と位置づけている。2026年の出品は洋酒部門594アイテム、焼酎・泡盛部門189アイテムの計783アイテム。累計では洋酒部門4,411アイテム、焼酎・泡盛部門1,662アイテムが出品されてきた。
部門の作りも独特で、ウイスキーやジン・ラム・ブランデーと並んで、焼酎・泡盛が同じ審査会の中にある。焼酎部門が加わったのは2020年。「日本の国酒を海外の人に知ってもらう」という動機から始まった枠だ。
1本を飲むのは、8〜10人
2026年の審査員は過去最多の316人。この数字はよく引かれるが、これは延べの人数で、1本のボトルを316人が飲むわけではない。ここを取り違えると、賞の重みを読み違える。
実際の設計はこうだ。一次審査は1月〜2月のリモート形式。出品ボトルを小瓶に分け、指定のテイスティンググラスと一式にして各審査員へ送る。1人が担当するのは30〜40アイテムで、1アイテムに対して8〜10名程度が採点する。審査員は事前に解説動画を見て共通サンプルを試し、基準をすり合わせてから、銘柄を伏せたブラインドで飲む。
採点は100点満点。①アロマ ②フレーバー ③総合(バランス・フィニッシュ)の三つの観点に分けてつける。集計に統計処理をかけた結果、銀賞と銅賞はこの一次でそのまま確定し、最高金賞と金賞の候補だけが二次審査へ送られる。
二次審査は3月〜4月。ここでは1アイテムに対して10〜15名程度が飲み直す。一次より一本あたりの人数が増える設計だ。そして最も点数の高かったアイテムが、国や地域を超えて酒類のくくりごとに選ばれる特別賞「BEST OF THE BEST」となる。
審査員の顔ぶれも、評論家ばかりではない。バーテンダー、酒類メーカー、酒販店、輸入業者、コニサー資格の保有者、業界ジャーナリスト——日本でこの酒を実際に売り、注ぎ、飲んでいる人たちが中心にいる。一人の評論家が全部を採点する『ウイスキー・バイブル』とは、母集団の性格がまるで違う。
国別カテゴリーの並びに、一つだけ国のない枠がある
TWSCでもっとも独自なのは、カテゴリーの切り方だ。
洋酒部門の基本カテゴリーは、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズ、タイワニーズ、アジアン……と国・地域で並ぶ。ところがその列に、国名を持たない枠がひとつ混じっている。ワールドブレンデッドウイスキーだ。
TWSCは、2021年2月16日に日本洋酒酒造組合が発表した「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」(なぜ定義が必要だったのか)に準じた製品を「ジャパニーズウイスキー」として審査する。原料は麦芽・穀類と日本国内で採水した水、糖化・発酵・蒸留は国内、700リットル以下の木樽で3年以上国内貯蔵、国内で瓶詰めして40度以上——という条件だ。
そのうえでTWSCは、組合基準にはない枠を自前で二つ足している。熟成3年未満のものを受けとめるジャパニーズニューメイクスピリッツ(ニューボーン、ニューポットと呼ばれるもの)と、ワールドブレンデッドウイスキーである。後者は「2か国以上の原酒をブレンドした商品」で、公式にはこう書かれている——外国産のウイスキーを輸入し、日本でジャパニーズウイスキーとブレンドして瓶詰めした製品も、ここに含まれる、と。
つまり日本で瓶詰めされていても、海外の原酒が混ざっていればジャパニーズウイスキー部門では審査されない。国別の棚の列に、国をまたいだ一本のための棚がもう一つ用意されている、という構造だ。
これは机上の話ではない。2026年の受賞一覧を開くと、ワールドブレンデッドウイスキーのカテゴリーには22アイテムが並び、22行のうち8行は生産国の欄が「スコットランド、日本」のように複数国で埋まっている。最高金賞は福島県南酒販の「963 ボンズ ブレンデッドモルト」と、天鏡蒸溜所の「KAZE Founder's Reserve LEGACY」。金賞には長浜浪漫ビールの「AMAHAGAN BASIC Blend」と「AMAHAGAN Mizunara Wood Finish」が並んだ。
同じ造り手が両方の枠に出すこともある。イチローズモルトの「モルト&グレーン」には、自社の原酒に海外から輸入したモルト・グレーン原酒を合わせたがある一方で、年に一度、羽生や川崎といった閉鎖蒸溜所の国産原酒で仕上げるという別ラインもある。その2026年版が、後述するジャパングランプリのブレンデッド部門に選ばれた。ブランド名が同じでも、区分は別。が効いてくる場面だ。
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Ichiro's Malt & Grain World Blended Whisky
🇯🇵 日本 ・ 秩父蒸溜所ほか ・ ブレンデッド ・ NAS ・ 46%


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