なぜブッカーズは「樽から出したまま」売られているのか——友人へのクリスマスの贈り物が、無加水・無濾過のバーボンになるまで
60度を超え、ボトルごとに度数が違うバーボン「ブッカーズ」。始まりは、ジム・ビームの孫ブッカー・ノーが親しい人に配っていたクリスマスの贈り物だった。熟成庫の「真ん中の樽」を選ぶ理由、2016年の値上げ騒動、数滴の水から始める飲み方まで。
バーボンの棚に、木箱に入った、手書き風のラベルの一本がある。ブッカーズだ。度数は60度を超え、しかもボトルごとに数字が違う。ふつうの酒なら40度前後にそろえて出荷するのに、なぜこの一本は、樽から出したままの強さで売られているのか。
答えは、この酒がもともと「売るための酒」ではなかったことにある。この記事では、ブッカーズが一人の蒸溜家の贈り物から始まった経緯と、「樽から出したまま」が何を意味するのか、そして家での飲み方までをたどる。
贈り主は、ジム・ビームの孫
ブッカーズの名は、ブッカー・ノーという人物に由来する。ジムビームの創業家ビーム家の血を引き、ジェームズ・B・ビーム(ジム・ビーム)の孫にあたる。1965年にジムビームのマスターディスティラーとなり、2004年2月に74歳で亡くなった。大柄な体と豪快な人柄で知られた人で、口の中でバーボンを噛むように転がす飲み方、いわゆるケンタッキー・チューを広めたのもこの人だとされる。
一族の歩みはなぜジムビームは「世界一売れるバーボン」になったのかに詳しいが、ここで大事なのは、彼が「世界一売れる白ラベル」を造る立場にいながら、まったく別の一本を、ごく個人的に詰めていたことだ。
始まりは、クリスマスの贈り物だった
ビーム社の発表資料によれば、ブッカー・ノーは最初、ブッカーズを親しい友人や家族へのクリスマスの贈り物として造っていた。選んだのは、熟成庫の「センターカット」——中ほどの段に置かれた樽だ。
量産品のバーボンは、たくさんの樽を混ぜ合わせ、水で度数を整えてから瓶に詰める。味をそろえ、毎年同じ一本を届けるためだ。一方、身内に配る贈り物なら、そろえる必要はない。自分がいちばん旨いと思った樽を、いちばん旨いと思う状態で渡せばいい。
そうして配られていた酒が、1988年に一般向けの商品になる。最初の出荷はおよそ1,000ケースという小さなものだった。のちにビームは、ノブクリーク、ベイカーズ、ベイゼルヘイデンとあわせて「スモールバッチ・コレクション」を組むが、その中でもブッカーズは度数がいちばん高い一本であり続けている。
「樽から出したまま」とは、何をしないことか
ブッカーズのラベルが約束していることは、言い換えると**「しないこと」の一覧**だ。
- 加水しない:樽の中で熟成を終えた度数のまま瓶に詰める。そのため度数はバッチごとに違い、おおむね121〜130.6プルーフ(約60.5〜65.3%)の範囲で振れる。
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