なぜジョニーウォーカー ブルーラベルは、年数表記がないのに「最高峰」なのか——初期ボトルに刷られた「15〜60年」と、静かに消えた一行
ブラックラベルは「12年」と刻むのに、シリーズの頂点に立つブルーラベルには年数がない。1987年に「オールデスト」として生まれた一本の、初期ラベルに刷られていた「15-60年」という一行の行方をたどる。
ウイスキーを贈り物に探して棚を見上げると、青いラベルの一本が別格の値札をつけて置かれている。ジョニーウォーカー ブルーラベル。だが手に取ってラベルを読むと、奇妙なことに気づく。熟成年数がどこにも書かれていない。
定番の中核であるブラックラベルは「12年」と誇らしく刻んでいる。数万円の頂点に立つ一本のほうが、数千円の定番よりも、中身について語る言葉が少ないのだ。なぜ最高峰だけが年数を伏せているのか。
近年よく語られる「原酒不足によるノンエイジ化」を思い浮かべるかもしれない。だが時期が20年以上ずれている。ブルーラベルはその波よりはるか前に、すでに数字のないラベルで棚に立っていた。この記事では、この一本がまだ別の名前だった1980年代までさかのぼり、かつて「15〜60年」と刷られていた初期ボトルと、消えた一行の話をたどる。

もとの名前は「オールデスト」だった
ブルーラベルは、200年のジョニーウォーカー史のなかではかなりの新顔だ。原型が世に出たのは1987年。しかもそのときの名前は「ブルーラベル」ではなく、**ジョニーウォーカー・オールデスト(Johnnie Walker Oldest)**だった。
仕掛けたのは、ベイリーズやマリブを生んだ英国の酒類開発者トム・ジェイゴだと伝えられる。既存の高級ブレンドより明確に上の価格帯を狙った一本で、スコッチをどこまで高く売れるかを試す実験でもあった。
そして初期のオールデストのラベルには、いま存在しない一行が印刷されていた。「Aged 15-60 Years」。15年から60年の原酒を使っている、という表記である。オークションに出てくる当時のボトルにも、この文字がはっきり残っている。
ところがこの一行は、ごく初期の数バッチのあとに姿を消してしまう。1992年に「ブルーラベル」と改名され、赤・黒・青という色の序列の頂点に据えられたときには、ラベルはすでに年数について何も語らなくなっていた。
数字は「約束」であり、同時に「枷」でもある
なぜ消えたのか。それを考えるには、ラベルの年数が何を意味しているのかを押さえておく必要がある。
スコッチで年数を表示する場合、その数字は瓶詰めに使った原酒のうち、いちばん若いものの年齢でなければならない。「12年」と書かれていれば、中身に18年の原酒が混じっていてもかまわないが、11年の原酒は一滴も入っていないことが保証される。平均でも最長でもなく、下限の約束だ(詳しくは「12年」「18年」は何を意味するのか)。
飲み手にとっては分かりやすい保証である。だが造り手の側から見ると、同じ数字が枷になる。「15年」と刷った瞬間、たとえ13年で驚くほど仕上がった樽が目の前にあっても、それを使えばもう「15年」とは名乗れない。
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