なぜ日本人が飲む酒は減ったのに、ウイスキーは倍に増えたのか——10年で9%減った消費と、1.88倍になった一品目
国税庁の統計では、この10年で酒の消費は約9%減った。ところが同じ10年で、ウイスキーの販売数量は1.88倍になっている。誰がどれだけ飲まなくなり、なぜウイスキーが伸びたのかを、公的統計の数字から追う。
「若者の酒離れ」という言葉を、もう何年も聞いている。実際、居酒屋で一杯目にウーロン茶が並ぶ光景は、珍しくなくなった。
ところが酒売り場のウイスキーの棚は、この10年でむしろ広くなっている。角瓶の隣に知多が置かれ、レモンサワーの山の横にハイボール缶が積まれている。
酒は減っているのに、ウイスキーは増えている。この二つは両立するのだろうか。まず国税庁と厚生労働省が公表している数字で事実関係を確かめ、そのうえで理由を考えてみたい。
まず、酒はどれだけ減ったのか
国税庁の「酒のしおり」(令和7年7月)に、「酒類販売(消費)数量の推移」という表がある。
令和5年度(2023年度)の販売数量は 782万2,041kℓ。10年前の平成25年度は 859万1,118kℓ だったから、比率にして 91.0% ——約9%減った。国税庁自身も、同時に出している「酒レポート」で「10年前と比較して約9%減少しています」と書いている。
同じ表には、20歳以上1人当たりの数量も併記されている。こちらは 82.8ℓ から 75.6ℓ へ。一人が1年に飲む酒が、7ℓ ほど減った計算になる。ビールの中瓶(500ml)で数えれば、14本分が消えた。
つまりこれは「人口が減ったから総量も減った」という話ではない。一人当たりでも、はっきり減っている。
(なお、この統計は沖縄県分を含まない。以下、販売数量の数字はすべて同じ条件である。)
飲む人の側は、どうなっているのか
では、誰が飲んでいるのか。ここは厚生労働省の「国民健康・栄養調査」が数字を持っている。
令和5年(2023年)の調査で、「飲酒習慣のある者」——週に3回以上飲み、飲む日は1日1合以上と答えた人——の割合は、男性 32.1%、女性 8.9%、20歳以上の総数で 19.8% だった。
年齢階級別に見ると、男性の落差が大きい。
- 20代 9.6%
- 30代 25.2%
- 40代 36.9%
- 50代 39.0%
- 60代 44.1%
- 70歳以上 27.0%
20代男性と60代男性で、4.6倍の開きがある。
ただしこれは、ある一時点を切り取った数字であることに注意したい。世代差が大きいことは示せても、「20代が昔より飲まなくなった」ことまでは、この表だけでは言えない。若い世代が上の世代より飲まないのは、昔から珍しいことではないからだ。
時間の変化がはっきり読める指標もある。同じ調査の「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」(1日当たりの純アルコールが男性40g以上、女性20g以上)だ。令和5年の割合は、20歳以上の総数で男性14.1%、女性9.5%。そして報告書は、この10年で男性には有意な増減がなく、女性は有意に増加していると明記している。
意外かもしれないが、重い飲み方をする男性の割合には、この10年で統計的に有意な変化が確認されていない。増えても減ってもいない、ということだ。そして女性はむしろ増えている。
つまり「日本人が酒を飲まなくなった」という要約は、正確には「一人が飲む量が減った」である。飲む人が消えた、という話ではない。
もうひとつ、この先を読むために断っておきたいことがある。82.8ℓ → 75.6ℓ という数字は酒の容量であって、純アルコール量ではない。体積の小さい酒に需要が移れば、飲むアルコールの総量が変わらなくてもこの数字は減る。後で見るウイスキーの伸びは、じつはこの減り方の一因でもある。
その同じ10年で、ウイスキーは倍になった
ここからが本題である。同じ国税庁の資料の付表を、今度は品目ごとに縦に読む。平成25年度を100としたときの、令和5年度の販売数量はこうなる。
- 清酒 67.3%
- 連続式蒸留焼酎 72.2%
- 単式蒸留焼酎 73.9%
- ビール 83.4%
- 果実酒(ワイン) 99.8%
- ウイスキー 187.8%
数量でいえば、10万7,846kℓ から 20万2,576kℓ へ。20歳以上1人当たりでは 1.0ℓ が 2.0ℓ になった。市場全体が9%縮むあいだに、ほぼ倍になった品目である。

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