余市と宮城峡は何が違うのか——ニッカ二大シングルモルト、味の個性と選び方
同じニッカなのに、余市は重厚でスモーキー、宮城峡は軽やかで華やか。なぜ正反対の個性が生まれるのか。石炭直火とスチーム、海と峡谷、二つの蒸溜所の違いを、竹鶴政孝の狙いから読み解き、最初の一本の選び方まで案内します。
同じニッカなのに、なぜこれほど違うのか
ニッカウヰスキーには、二つの蒸溜所がある。北海道の海沿いに建つ余市と、仙台郊外の峡谷にある宮城峡。同じ会社の同じシングルモルトでありながら、その味わいは驚くほど対照的だ。余市は重厚でスモーキー、宮城峡は軽やかで華やか——まるで性格の違う兄弟のようである。
なぜ、これほど違うのか。答えは、創業者・竹鶴政孝が「あえて違う原酒を造ろう」と考えたことにある。この記事では、二つの蒸溜所の生い立ち・立地・造り・味わいの違いを整理し、最初の一本をどう選ぶかまで案内する。
生まれた時代と、竹鶴の狙い
余市蒸溜所の創業は1934年。スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴が、自ら興した会社(ニッカの前身・大日本果汁)で最初に構えた蒸溜所である。一方の宮城峡は、それから35年後の1969年に誕生した、ニッカ二番目の蒸溜所だ。
竹鶴には信念があった。「異なる場所で生まれた複数の原酒を混ぜ合わせてこそ、ウイスキーは豊かになる」というものだ。だからこそ、余市とは気候も造りも違う土地を求めた。その結果選ばれたのが、宮城峡だった。
海の余市、峡谷の宮城峡
余市は、日本海に近い北海道の港町にある。冷涼で湿潤な気候はスコットランドを思わせ、近くではピート(泥炭)も採れた。竹鶴が「ここしかない」と惚れ込んだ土地である。
宮城峡は、新川(にっかわ)と広瀬川という二つの川が出会う谷あいにある。伝わるところでは、竹鶴はこの新川の水でブラックニッカの水割りを作って飲み、その水質に感嘆してその場で建設を即決したという。川がもたらす靄(もや)は、樽での熟成にも適していた。
石炭直火とスチーム——味を分ける造りの違い
二つの蒸溜所を最も強く特徴づけるのが、蒸溜の熱の入れ方だ。
余市は、創業以来の石炭直火蒸溜を守り続けている。ポットスチルの釜の底に直接、石炭の炎を当てる方法で、これを今も続けているのは世界でも余市だけとされる。高温で力強く沸き立つことで、重厚でコクのある原酒が生まれる。ポットスチルはずんぐりとしたストレートヘッド型で、上部の管(ラインアーム)が下を向いているのも、重い成分を残す造りだ。
宮城峡は対照的に、スチームによる間接蒸溜を採用する。釜に巡らせたパイプに蒸気を通し、より低い温度でじっくり蒸溜する。胴がふくらんだバルジ型のポットスチルと上向きのラインアームが、軽くきれいな成分だけをすくい上げ、華やかでスムースな原酒を生む。
味わいの個性——そして飲み比べ
こうした違いは、そのままグラスの中に表れる。
余市は、潮っぽさとピートのスモーキーさ、力強いモルトのコク。骨太で、飲みごたえがある。

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