バーのウイスキー1杯は、なぜその値段なのか——ボトル1本から取れる杯数と、チャージ・原価率の内訳
酒屋で5,000円のシングルモルトが、バーでは1杯1,500円。その差はどこへ行くのか。1杯の量・原価率・チャージ・酒税という実際の数字で伝票を分解し、どの一杯が割高でどの一杯が割安なのかを見分ける物差しを整理する。
バーの伝票を見て、ふと考えたことはないだろうか。いま飲んだシングルモルトは、酒屋なら1本5,000円ほどで買える。それが1杯1,500円。1本から15杯前後は取れる計算なのに、なぜこの値段になるのか。
答えは「ぼったくり」でも「バーだから特別」でもない。伝票の数字は、グラスの中の酒代・店の固定費・チャージ・サービス料という別々の要素が積み上がってできている。この記事では、その内訳を実際の数字で分解する。読み終える頃には、どの一杯が割高で、どの一杯がむしろ割安なのか、自分で見当がつくようになるはずだ。
まず、グラスの中の酒はいくらか
出発点は「1杯が何ml か」だ。サントリーの公式FAQによれば、シングルは1オンス(約30ml)、ダブルは2オンス(約60ml)、その中間のジガーが1.5オンス(約45ml)。バーでウイスキーをそのまま出す場合、30mlか45mlが目安とされる。
700mlのボトルから取れる杯数は、単純に割ればこうなる。
- 30ml出し … 約23杯
- 45ml出し … 15杯強
これは注ぎこぼしやメジャーに残る分を数えない理論値なので、実際はもう少し減る。そのうえで、ボトルの店頭価格から1杯分の酒代を出すと次のようになる。
| ボトルの店頭価格 | 30ml出し | 45ml出し |
|---|---|---|
| 2,000円 | 約86円 | 約129円 |
| 5,000円 | 約214円 | 約321円 |
| 10,000円 | 約429円 | 約643円 |
ひとつ断っておくと、店は酒屋の店頭価格ではなく卸値で仕入れる。実際の原価はこの表よりさらに低いことが多く、これは「多めに見積もった場合」の数字だと思ってほしい。
それでも、冒頭の一杯——5,000円のボトルを45mlで注いだ1,500円のシングルモルト——のうち、グラスに入っている液体そのものは約320円にとどまる。
家で1本開けたときの杯数とコスパは ウイスキー1本で何杯飲める? に、呼び名の由来は なぜウイスキーは「シングル」「ダブル」という単位で数えるのか にまとめている。
「原価率」という物差し
売価に占める、その1杯分の原価の比率を、飲食店では原価率と呼ぶ。飲食店向けの経営情報では、バーのドリンク原価率は10〜20%程度を目安に設計され、ハイボールやジントニックのような定番は10〜15%、シングルモルトやクラフトジンといった「こだわりボトル」は20〜30%に置かれることが多いとされる。
さきほどの一杯を当てはめると、1,500円に対して酒代320円で約21%。こだわりボトルの帯の下端にあたる。ただしこの320円は店頭価格から出した数字なので、卸値で計算すればもう少し下がるはずだ。実際には目安の帯よりやや薄い原価率で置かれている、と見ておくのが妥当だろう。

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