グレンモーレンジィとアードベッグは何が違うのか——同じ会社の「煙のない酒」と「煙る酒」。真逆の二本は、どちらも重い蒸気を鍋へ戻していた
華やかなハイランドモルトと、アイラ島のスモーキーモルト。同じ会社が持つ正反対の二本を麦芽と水・樽で比べると、違いの大半はピートで決まる。そして蒸溜では、両者とも「還流」で酒を軽くしていた。
片や、オレンジや白桃を思わせる華やかなハイランドモルト。片や、煙と潮の香りが強烈な、アイラ島のスモーキーモルト。グレンモーレンジィとアードベッグは、棚に並べると正反対の酒に見える。
ところがこの二つは、同じ会社の酒である。1997年、グレンモーレンジィ社が、操業を停止していたアードベッグを、蒸溜所と在庫ごと約700万ポンドで買い取った。2004年には両方そろってフランスのLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループの傘下に入っている。
同じ持ち主のもとで、なぜここまで違う酒が造られているのか。この記事では、二つの違いを「麦芽と水」「樽」の二つで並べ、続いて意外な共通点である「蒸溜」を見て、最後にどちらから飲むかの目安を示す。
先に結論を書いておく。違いの大部分は、ピートを焚いた麦芽を使うかどうかで決まる。そして意外なことに、蒸溜の工程では、二つの蒸溜所は同じ方向を向いている。
違い1:麦芽と水——煙は、蒸溜所に入る前に決まっている
いちばん大きな分かれ目は、原料の段階にある。
グレンモーレンジィは、ピートを焚かずに乾燥させた麦芽(ノンピート麦芽)を使う。仕込み水は蒸溜所の背後に湧くタルロギーの泉で、ミネラルを多く含む硬水だ。スコットランドで硬水を使う蒸溜所は少数派だとされている。
アードベッグの麦芽は、アイラ島のポートエレン製麦所で強くピートを焚いて乾燥させたものだ。ウイスキー専門サイト Scotch Whisky(scotchwhisky.com)は、アードベッグの煙はこのポートエレンでの強いピーティングから来ると説明している。仕込み水は、看板ボトル「ウーガダール」の名の由来でもあるウーガダール湖から引いている。
ウイスキーの煙の香りは、ほとんどが麦芽を乾かすときに焚いたピートの煙から来る(ピートの仕組み、ppmという数字の読み方)。つまりグレンモーレンジィとアードベッグの最大の違いは、蒸溜所に入る前の麦芽の段階で、すでにほぼ決まっている。
違い2:樽——「着せ替え」で見せるか、煙の下地として使うか
二つ目の違いは、樽の使い方にある。
グレンモーレンジィの土台はバーボン樽で寝かせた原酒だ。そこにシェリー樽やポートワイン樽、ソーテルヌの貴腐ワイン樽などで追加の熟成をかけ、表情を変えた派生品を揃えている。1990年代に「カスクフィニッシュ」を広めた蒸溜所の一つとして知られ、樽で着せ替えるのが得意な酒だと言える(なぜグレンモーレンジィはスコットランドで一番背の高い蒸溜器を使うのか)。

アードベッグも、看板の10年はバーボン樽熟成だ。シェリー樽の原酒を合わせたウーガダールのような派生品もある。ただしこちらは、樽の個性はあくまで煙の下に敷く味つけで、主役は最後まで煙のままだ。
ついでに瓶詰めの仕方も見ておくと、ここにも違いがある。アードベッグ10年は冷却ろ過をせず(ノンチルフィルター)、46%で瓶詰めされる。一方グレンモーレンジィの看板「オリジナル」は40%だ。日本ではこのオリジナルが2024年8月に10年から12年へ切り替わり、10年は流通在庫のみになった。
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