なぜエドラダワーは、いまも「最小の蒸溜所」と呼ばれるのか——「法律で許された最小のスチル」を条文で引いたら、書いてあることが違った
「スコットランド最小の蒸溜所」「あのスチルは法律で許された最小サイズ」——エドラダワーの枕詞を、条文と入口の看板で確かめると、どちらも実態からずれていた。それでも中身は古びていない。
パースシャーの丘のくぼみに、白い壁の小屋が数棟だけ建っている。ピトロッホリーの町から車で10分ほど、1825年に始まったエドラダワー蒸溜所だ。2025年で200年を数えた。
この蒸溜所は、日本でもたいてい同じ枕詞で紹介される。「スコットランド最小の蒸溜所」。そしてよく、こう添えられる——「あのスチルは、法律で許された最小のスチルなのだ」と。
その条文を引いてみたら、書いてあることがだいぶ違った。
まず、何がそんなに小さいのか
エドラダワーのポットスチルは、業界のデータベースでは初留用が約4,200リットル、再留用が約2,200リットルとされることが多い(どちらも3,000リットルとする資料もあり、数字には幅がある)。スコッチの初留用スチルは1万リットル台が普通で、2万リットル級もあることを思えば、5分の1前後という小ささだ。
小さいのはスチルだけではない。公式サイトの説明によれば、糖化に使う開放式のマッシュタンは鋳鉄製で「110年以上前のもの、そしてほぼ毎日使われている」。発酵槽(ウォッシュバック)はオレゴンパイン製が2基だけで、「どちらも50年以上」経っている。
冷却も変わっている。麦汁を冷やすのは「モートン式冷却器」という古い方式で、公式はこれを「ウイスキー業界でいまも動いている最後の一台」と説明する。蒸溜で立ちのぼるアルコール蒸気を冷やす側も、いまでは少数派になったワームタブ(虫樽)——蛇管を水槽に沈める方式で、蒸溜所の脇を流れるエドラダワー川の水で冷やされる。
ただし、ここで挙げた顔ぶれはいずれも古いほうの蒸溜所の設備である。話は後半でそこへ戻る。

「法律で許された最小のスチル」を、条文で確かめる
さて、冒頭の説だ。根拠として持ち出されるのは、英国の酒類関税法(Alcoholic Liquor Duties Act 1979)の第12条第5項である。制定時の条文を訳すと、こうなる(抜粋)。
蒸溜免許が求められている施設で使われる最大のスチルが400ガロン未満の容量である場合、当局(当時の関税消費税庁)は免許を拒否することができ、または適当と認める条件を付したうえでのみ与えることができる。
読み比べてほしいのは、ここが「禁止」でも「最低基準」でもない、という点だ。条文が定めているのは、小さいスチルの申請について当局が裁量を持つということだけである。「これ未満は違法」とはどこにも書かれていない。
そして数字も合わない。400英ガロンは約1,818リットル(米ガロンなら約1,514リットル)。しかも条文が見るのは「最大のスチル」だから、エドラダワーの場合は初留用の約4,200リットルで判定されることになる——線の2倍を超えている。小さいほうの再留用スチルですら、この線を上回る。
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