シェリー樽のウイスキーは、なぜ「擦ったマッチ」の匂いがすることがあるのか——空き樽に灯した硫黄と、欠点か個性かで割れる評価
シェリー樽のウイスキーにときどき現れる「マッチ」「火薬」のような匂い。その正体は硫黄化合物だ。蒸溜所が狙って残す硫黄と、樽の燻蒸から入り込む硫黄、評論家のあいだで割れる評価、感じ方の個人差まで整理する。
シェリー樽のウイスキーを開けたら、干しぶどうやチョコレートの奥に、ふっと「擦ったマッチ」のような匂いが立った。人によっては火薬、ゆで卵、ゴムと表現するかもしれない。
この匂いの正体は、多くの場合「硫黄化合物」と呼ばれる成分のなかまだ。そしてウイスキー愛好家のあいだでは、これが欠点なのか、個性なのかで長く議論が割れてきた。
この記事では、硫黄の匂いがどこから来るのか、なぜシェリー樽の一杯で話題になりやすいのか、そして飲み手としてどう付き合えばいいのかを整理する。
硫黄の匂いは、造りのあちこちで生まれる
まず押さえておきたいのは、硫黄化合物はシェリー樽だけの問題ではないということだ。
大麦にはもともと硫黄を含むアミノ酸がある。発酵中には、酵母が硫化水素などの硫黄化合物を生み出す。ウイスキーの製法はいわば、こうした成分を「どれだけ減らすか、どれだけ残すか」を調整していく工程でもある。
その調整役の代表が、蒸溜器の銅だ。銅は蒸気中の硫黄化合物と反応して取り除く働きを持つ(詳しくはなぜポットスチルは銅でできているのか)。逆に、銅との接触をあえて減らすワームタブで冷やせば、硫黄由来の重さが残る。
つまり硫黄の香りには、蒸溜所が意図して残すものと、意図せず入り込むものの両方がある。
意図して残す蒸溜所もある
意図して残す例として知られるのが、スペイサイドのクライゲラヒだ。
ウイスキー専門誌Whisky Magazineの記事で、デュワーズ社のマスターブレンダー、ステファニー・マクラウドは、クライゲラヒでは果実的なエステルと並んで「肉っぽい、硫黄の香り」を求めていると語っている。ここでの硫黄は欠点ではなく、骨太な家風を支える材料だ。

ワームタブで冷やし、肉々しさで知られるモートラックも、硫黄を含む重さを個性として語られることが多い蒸溜所だ。
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