
Mortlach
スコットランド・スペイサイド、ダフタウンに立つ、「ダフタウンの野獣(ビースト)」と呼ばれる異色の蒸留所である。1823年、ジェームズ・フィンドレーターが創業した、ダフタウン最古の公認蒸留所だ。1842年にグラント兄弟らが引き継ぎ、1923年にジョン・ウォーカー&サンズの手に渡った。現在はディアジオが所有する。最大の特徴は、数学的に「2.81回蒸留」と表される複雑で独特な蒸留工程と、現代的な熱交換器を用いずワームタブ(蛇管)式の冷却器を残す点だ。ワームタブは銅との接触を抑え、硫黄由来の重い成分を残すことで、肉やなめし革を思わせる濃厚でセイヴォリーな酒質を生む。骨太で複雑な、まさに野獣の名にふさわしい造り手だ。
モートラック最大の特徴は、複雑で独特な蒸留工程だ。ウイスキー評論家デイブ・ブルームが2012年に「ダフタウンの野獣」と評したように、その製法は数学的に「2.81回蒸留」と表される変則的なもので、濃厚な酒質を生む。現代的な熱交換器の凝縮器を用いず、伝統的なワームタブ(蛇管)式で冷却する点も重要だ。ワームタブは銅との接触が少なく、硫黄由来の重い成分を残すため、肉やなめし革を思わせるセイヴォリーで骨太な個性を与える。
モートラック蒸留所は、1823年にジェームズ・フィンドレーターが創業した、ダフタウンで最初の公認蒸留所である。かつての密造所跡地に、酒税法を機に生まれた。幾度かの所有者交代を経て、1842年にグラント兄弟がジョン・アレクサンダー・ゴードンと組んで取得し、1851年に本格稼働。1923年にジョン・ウォーカー&サンズへ売却され、現在はディアジオが所有する。
蒸留所はスコットランド・スペイサイド、七つの蒸留所で知られるダフタウンに立つ。ダフタウン最古の蒸留所として、この地のウイスキーの歴史を担ってきた。スペイサイドの良質な水と穀物に恵まれた立地が、力強い造りを支えている。ダフタウンは「ローマは七つの丘の上に建ち、ダフタウンは七つの蒸留所の上に建つ」と謳われた、スコッチの一大集積地だ。
「モートラック 12年」「16年」「20年」などのシングルモルトを展開する。肉的(ミーティ)で複雑、重厚な酒質は、長らくブレンデッド用の原酒として重宝され「隠れた名酒」とされてきた。ディアジオがシングルモルトとして本格展開して以降、その野獣のごとき個性が広く知られるようになった、ダフタウンの異才だ。
Mortlach 12 Year Old The Wee Witchie
🏴 スコットランド ・ モートラック蒸留所 ・ シングルモルト ・ 12年 ・ 43.4%
Mortlach 16 Year Old Distiller's Dram
🏴 スコットランド ・ モートラック蒸留所 ・ シングルモルト ・ 16年 ・ 43.4%
Mortlach 20 Year Old Cowie's Blue Seal
🏴 スコットランド ・ モートラック蒸留所 ・ シングルモルト ・ 20年 ・ 43.4%

Gordon & MacPhail Distillery Labels Mortlach 21 Year Old
🏴 スコットランド ・ モートラック蒸留所 ・ シングルモルト ・ 21年 ・ 43%

クライゲラヒやモートラックに漂う、肉や煮野菜を思わせる骨太な風味。その多くは「ワームタブ」という古い冷却装置に由来する。なぜ蒸気の冷やし方ひとつで酒質がここまで変わるのか、銅接触と硫黄という視点から解き明かす。

ラベルに刷られる「3回蒸留」と、多くのスコッチが選ぶ「2回蒸留」。蒸留を1回増やすと酒は何が変わるのか。2回が基本の理由から、スプリングバンクの2.5回・モートラックの2.81回という中間の妙まで、蒸留回数に込められた設計思想を読み解く。

華やかなスペイサイドの中心で「ダフタウンの野獣」と呼ばれるモートラック。肉のように重厚な酒質と、謎めいた「2.81回蒸留」の正体を、コーウィー父子の設計とワームタブから読み解く。

蒸溜所の象徴、銅のポットスチル。ステンレスのほうが安く丈夫なのに、なぜ銅なのか。硫黄を掴む化学と、その代償として器が痩せていく「消耗品」としての宿命から、あの美しい釜の正体を読み解く。

蒸溜室の中央に据えられた、真鍮とガラスの箱「スピリッツセーフ」。錠が下りているのは味や衛生のためではなく、税のためである。長らく鍵を握っていたのは造り手ではなかった。触れられないまま、どうやって味は決められてきたのか。

棚に並ぶ年数は12年、18年、25年。50年ものもある。ではなぜ、100年ものは存在しないのか。世界最長は85年——樽から消えていく中身と、戻せない度数が、100年の手前で待つことをやめさせる。

2026年、材料科学の専門誌に「Whisky-Inspired Active Matter」という論文が載った。蒸溜所の銅と硫黄の反応から着想を得て、髪より小さい粒子を毎秒30マイクロメートルで泳がせた研究だ。ただし銅に残ったのは硫化銅ではなく、エタノールを混ぜると粒子は止まった。

この蒸留所が属する地域
スペイ川流域に蒸留所が集中する、スコットランドで最も蒸留所数の多い地域。シェリー樽由来のリッチな甘みからバーボン樽由来の軽やかな果実香まで幅が広いが、総じて華やかでエレガントな味わいが多い。グレンリベット、グレンフィディック、マッカランなど世界的な銘柄を数多く擁する。
スペイサイドを深掘りする →地理ではなく味わいで繋がる、別の産地の蒸留所。