ウイスキーで消毒はできるのか——2020年に国が示した線は原則70〜83%、棚の一本は40%。それでも中身が腐らない理由
2020年、国は医療機関等において、やむを得ない場合に限り高濃度エタノールを手指消毒の代替に認めた。線は原則70〜83vol%、緩和後も60%台。40%のウイスキーは届かない。それでも瓶の中が腐らない理由。
戸棚のウイスキーは40%。薬局に並ぶ消毒用エタノールは80%前後。同じアルコールなのに、片方は手指の消毒に使えて、片方は使えない。その差はどこにあるのか。
そして妙なことに、消毒には足りないはずの40%は、何年経っても腐らない。菌を仕留められないのに、菌に侵されもしない。この非対称は、どこから来るのか。
2020年、国が開けた扉
手指消毒用のエタノールが払底した2020年、厚生労働省は3月23日付の事務連絡で、臨時的・特例的な対応として、医療機関等において、やむを得ない場合に限り、酒類製造者などから購入した「高濃度エタノール製品」を手指消毒用エタノールの代替として用いて差し支えない、とした。
そこに書かれた要件は二つ。エタノール濃度が原則70〜83vol%の範囲内であること。そしてメタノールを含まないこと。4月10日の改定では、こうした製品を販売する事業者が「本製品は医薬品や医薬部外品ではありませんが、消毒用エタノールの代替品として、手指消毒に使用することが可能です」と表示してよい、とまで明記された。
濃度の線は、その後さらに動く。4月22日の改定(その2)で、60vol%台のエタノールにも一定の有効性があるとの報告を踏まえ、「70vol%以上のエタノールが入手困難な場合には、手指消毒用として、60%台のエタノールを使用しても差し支えない」と緩められた。
参考までに、日本薬局方の消毒用エタノールの規格は76.9〜81.4vol%。厚生労働省が案内する消毒の濃度も「70%以上95%以下」で、入手困難な場合に限って「60%台」まで許容する、という書き方になっている。
どの物差しを持ってきても、いちばん緩い線で60%台。棚の一本の40%は、そのどれにも届かない。
濃ければ効く、ではない
ここで直感に反することが起きる。「では99.5%の無水エタノールが最強なのか」というと、逆なのだ。
アルコールが微生物を殺すのは、細胞のタンパク質を変性させるからだが、その変性には適度な水が要る。水がほとんど無いと、微生物の表面だけを一瞬で固めてしまい、内部へ届く前に蒸発してしまう。だから無水エタノールは消毒ではなく、掃除や電子機器の脱脂に回される。
効くのは、アルコールと水がほどよく混ざった帯だけだ。ウイスキーの40%は、その帯から「水が多すぎる側」に外れている。
それでも腐らないのは、なぜか
では、消毒には足りない40%の液体が、なぜ何年経っても傷まないのか。
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