ハイボールとビールは何が違うのか——ビール中ビン1本は、ハイボール2杯ぶん。純アルコール・カロリー・プリン体・税で並べる
居酒屋で隣に並ぶ二杯を、純アルコール量・カロリー・プリン体・酒税の四つで比べる。ビール中ビン1本のアルコールは、シングルで作ったハイボールおよそ2杯ぶん。「ハイボールは強いから酔う」という思い込みを、公表された数字でほどく。
居酒屋のドリンクメニューで、ビールとハイボールはたいてい同じ段に、似た値段で並んでいる。どちらを頼んでも「とりあえずの一杯」として通る。
では、この二つは何が違うのか。「ハイボールはウイスキーだから強い」「ビールのほうが太る」——そう言われることが多い。だが公表されている数字を並べてみると、どちらも「何と何を比べるか」を決めないと成り立たないことが分かる。
ここでは(1)造りの分かれ目、(2)1杯に入るアルコールの量、(3)カロリーとプリン体、(4)値段と税、の四つで比べていく。
先に結論を書いておく。ビール中ビン1本に入っているアルコールは、シングルで作ったハイボールおよそ2杯ぶんにあたる。ハイボールの「強さ」は酒の度数ではなく、注いだ量が決めている。
途中までは兄弟、蒸留から他人になる
造りの話から入ると、違いの根っこが見える。
穀物を糖化させ、酵母で発酵させる——大まかな道筋は、ビールもウイスキーも同じだ。違うのは、ビールが発酵の前に麦汁を煮沸してホップを加えるのに対し、ウイスキーはそれをしないこと。だからウイスキーの造り手が発酵槽から取り出す液体「ウォッシュ」は、しばしば「ホップを使わないビール」にたとえられる。
分かれ目が決定的になるのは、発酵のあとだ。ビールはここから仕上げに向かい、ウイスキーは単式蒸留や連続式蒸留にかける。
蒸留は、アルコールと香りの成分を選んで取り出し、糖などの不揮発性の成分を置いていく作業である。だからウイスキーには糖が残らない(なぜウイスキーは「糖質ゼロ」なのか)。そして残った液体を樽に預ける。ビールにはない時間だ。
ビールは発酵させたものをそのまま飲む酒、ウイスキーは発酵させたものから要る部分だけを抜き出し、樽に預けた酒——この一行が、以下の違いをほとんど説明してしまう。
1杯に入るアルコールは、思っているのと逆かもしれない
本題に入ろう。酒の強さを比べる物差しは「純アルコール量」で、計算式は決まっている。
純アルコール量(g)= 酒の量(ml)× 度数(%)÷ 100 × 0.8
厚生労働省のアルコール健康障害の早期介入ガイドライン(2024年)は、この式でおおむね20グラムになる量を、酒ごとに並べている。目安はこうだ。
- ビール・発泡酒(5%)……500mL(中ビンまたはロング缶1本)
- ウイスキー・ジンなど(40%)……60mL(ダブル1杯)
つまりウイスキーをダブルで1杯飲むと、ビール中ビン1本とほぼ同じだけのアルコールが体に入る(式に当てはめると、60mL・40%は19.2グラムになる)。
話を居酒屋に戻す。ハイボールに使うウイスキーはシングル=30ml前後を目安にする店が多い。仮に40%のウイスキー30mlなら、純アルコールはおよそ9.6グラム。中ビン1本の半分に届かない。
炭酸で満たされたジョッキは見た目に立派だが、入っている酒は小さなグラス1杯ぶんでしかない。「ハイボールのほうが強いから酔う」という印象は、しばしば因果が逆になっている。
ただし度数は銘柄で違う。同じ30mlでも、37%なら8.9グラム、43%なら10.3グラム——43%ともなれば中ビン1本のちょうど半分ほどになる。それでも1本ぶんには遠い。それに「中ジョッキ」にも決まった容量があるわけではない。店が使うジョッキで変わるし、泡の分だけ液量は表示された容量より少ない。生ビール1杯とハイボール1杯の差は、中ビンで比べたときほど開かないこともある。
そして裏返せば、家では同じグラスで倍のアルコールを飲むこともできる。ウイスキーは少しの量でもしっかり酔う酒で、濃さを決めているのは自分だ。作るときの比率は黄金比にまとめた。
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