ハイボールとレモンサワーは何が違うのか——糖質・カロリー・純アルコール量を並べると、選び分けの基準が見えてくる
居酒屋の二枚看板を、中身の酒・ラベル表示・カロリーの内訳・純アルコール量で比較。じつは「チューハイ」の「ハイ」はウイスキーハイボールの「ハイ」だった——同じ祖先を持つ二杯の、選び分けの物差し。
同じテーブルに並ぶ、二枚看板
居酒屋のドリンクメニューを開くと、ハイボールとレモンサワーがたいてい同じ値段で、隣り合って並んでいる。どちらもジョッキで出てきて、どちらも炭酸で、どちらも「とりあえず」の一杯として通用する。
では、この二つは何が違うのか。「レモンサワーは甘いから太る」「ハイボールは糖質ゼロだから太らない」——そう説明されることが多い。だが、メーカーが公表している数字を並べてみると、この説明は肝心なところを外している。
この記事では、二杯を(1)中身の酒、(2)缶やラベルの表示、(3)カロリーの内訳、(4)純アルコール量、の四つで比べる。そのうえで、家で作るときの比率と、選び分けの目安まで示す。
先に結論を書いておく。缶で標準的な7〜8%の一杯なら、糖質の有無で選ぶ意味はほとんどない。効いてくるのは、香りがどこから来ているかと、一杯に入っている酒の量のほうだ。
「チューハイ」の「ハイ」は、ハイボールの「ハイ」だった
まず、意外に知られていない話から。
レモンサワーの親にあたる「チューハイ」は、焼酎ハイボールの略だと言われている。焼酎の「酎」と、ハイボールの「ハイ」。つまり名前の後半は、ウイスキーの炭酸割りから借りてきたものだ。
誕生の経緯には諸説ある。宝酒造が運営する読み物では、1951年に東京・下町の酒場の主人が、進駐軍の駐屯地で飲んだウイスキーハイボールに感銘を受けて「元祖焼酎ハイボール」を生んだ、という伝承が紹介されている。別の説では、1952年に天羽飲料製造が売り出した「ハイボールA」——炭酸ではなく、焼酎に加えて使う無果汁の風味付けエキスだ——を使った一杯が飲食店で「焼酎ハイボール」と呼ばれ、それが縮まって「酎ハイ」になったとされる。どちらが正確かを決められる資料は見当たらないが、時期はいずれも昭和20年代後半にあたる。
共通しているのは動機のほうだ。当時の焼酎は、そのままでは飲みにくかった。それをどう美味しく飲むかという工夫の先に、ウイスキーハイボールという手本があった。
その後、レモンなどの果汁や甘味を加えたものが「サワー」と呼ばれるようになったと言われる(英語圏のカクテルのウイスキーサワーとは、系譜がやや異なる和製の用法だ)。ハイボールという名前そのものの由来については、なぜウイスキーの炭酸割りは「ハイボール」と呼ばれるのかで詳しく扱った。
つまりこの二杯は、ライバルというより親戚である。
中身の違いは、「香りをどこから持ってくるか」
酒税法の定義から入ると、違いがはっきりする。
ウイスキーは「発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの」。麦芽やトウモロコシから造る。なお、日本の酒税法のウイスキーの定義に樽熟成の要件は含まれていないが、実際に流通しているものはほぼすべて樽で寝かされている。
レモンサワーのベースは、多くが甲類焼酎か、ウォッカなどのスピリッツだ。甲類焼酎は酒税法上の「連続式蒸留焼酎」にあたり、連続式蒸留機で蒸留したアルコール分36度未満のものを指す。いずれも連続式蒸留機で高純度に仕上げた、香りの少ない酒である。ウイスキーと焼酎そのものの違いはウイスキーと焼酎は何が違うのかにまとめた。
ここが決定的な分かれ目になる。
- ハイボールは、香りが酒の側から来る。樽由来のバニラ、麦の甘み、銘柄によっては煙。割り材の炭酸水は、その香りを運ぶ役目に徹する。
- レモンサワーは、香りが割り材の側から来る。ベースの酒はあえて無個性に造られており、レモンの果汁と皮の精油が主役を張る。
「無個性なベース」は手抜きではなく設計だ。果汁の香りを立たせるには、ベースが黙っているほうが都合がいい。連続式蒸留という技術は、まさにそのために磨かれてきた。
そしてウイスキーの世界でも、同じ連続式蒸留という技術からグレーンウイスキーが生まれている。違うのはその先だ。**こちらは蒸留したあと、樽で寝かせる。**同じ装置から出てきた素っ気ない液体に、時間が香りを与える——そこがレモンサワーのベースとの分岐点になる。
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