飲まないと決めたウイスキーは、どう始末するのか——自治体が「絶対に流さないで」と書いているのは消毒用アルコールで、酒ではない
引っ越しや実家の片付けで出てくる、もう飲まない一本。自治体は消毒用アルコールについて「下水道管の中で火災が起きる」として流さないよう求めているが、酒類を名指しした記述は見当たらない。両者を分けている濃度の線と、捨てる前に確かめたい三つの出口を整理する。
引っ越しの荷造りや、実家の片付け。棚の奥から、封を切ったまま何年も経ったウイスキーが出てくることがある。もらいものだったり、口に合わなくて止まったままだったり、故人が飲んでいた一本だったりする。
飲む気はない。では捨てよう——と思ったところで、たいてい手が止まる。ビールの空き缶なら迷わないのに、中身の入った700mlの瓶は、どこにどう出せばいいのか急に分からなくなる。
調べていくと、この問いにはきれいに二つに割れた答えが用意されていることが分かった。自治体は「絶対に流さないで下さい」と強い言葉を使っている。ただし、その相手はウイスキーではない。順番に見ていきたい。
自治体の案内は「中身を空にして」で終わっている
ごみの出し方は市区町村が決めている。たとえば東京都小平市は、びんの出し方をこう案内している。
キャップやフタをはずし、中身を空にして水で軽くすすぎ、透明か半透明の袋にビンだけを入れて出してください
明快だ。キャップは外す、すすぐ、瓶だけを袋に入れる。ここまでは迷いようがない。
問題は、その手前にある。「中身を空にして」と書かれているが、空にした中身をどこへやるのかは、びんのページには書かれていない。異物を入れるな、汚れているとリサイクルできない、という注意はあっても、液体の行き先には触れていない。
びんのページは、瓶の出し方を書く場所であって、液体の始末を書く場所ではない。飲み残しの酒という「液体入りの資源ごみ」は、案内の切れ目に落ちている——そう思って液体の側を探すと、別の話がはっきり書いてあった。しかも、ごみの担当からも下水道の担当からも。
その話に入る前に、そもそも捨てなくていい可能性を先に確かめておきたい。
捨てる前に、三つの出口を確かめる
1. まだ飲める一本かもしれない
未開封のウイスキーには賞味期限がない。なぜ賞味期限が書かれていないのかは別に書いたが、要するに高いアルコール分が微生物の繁殖を許さないからで、「何年経ったから飲めない」という線は存在しない。
見るべきは年数ではなく状態のほうだ。液面がどこまで下がっているか、コルクが痩せていないか、澱や浮遊物が出ていないか——実家で見つけた古いボトルの見分け方にまとめてある。
開封済みの一本も、腐るわけではない。ただし空気に触れた分だけ表情は変わる。開けたあとの味の変化は、残量が少ないほど速く進む。「昔より角が立って感じる」程度なら、加水やハイボールにするだけで印象が変わることも多い。
2. 売れるかもしれない
棚に眠る一本を手放すこと自体は、多くの場合、合法だ。酒税法が免許を求めるのは「販売業」で、国税庁の通達はこれを継続的に販売することと定義している。営利目的かどうか、相手が特定か不特定かは問わない。重心は「継続」に置かれている。
つまり、家庭で不要になった一本を単発で手放すのと、繰り返し売るのとでは、法律上の扱いがはっきり違う。この線引きは飲まない一本を売ってもいいのかで詳しく扱っている。
3. 飲まなくても使い切れる
口に合わなかった一本は、料理に回すと驚くほど働く。肉の下ごしらえ、煮込み、デザート、コーヒー——料理で使い切る方法にまとめた。
逆に、消毒に使うのは無理だと考えたほうがいい。手指消毒に求められる濃度に、40度前後のウイスキーはまったく届かない。ウイスキーで消毒はできるのかで数字を追ったとおりだ。
自治体が「絶対に流すな」と書いているもの
三つとも当てはまらない。あるいは、箱で出てきて量が多すぎる。そこで液体の始末について書かれた案内を探すと、名指しで「流すな」と求められているものがある。消毒用アルコールだ。
東京都目黒区は、ごみ・リサイクルの案内としてはっきりこう書いている。
アルコール消毒液は揮発性が高く引火しやすいため、消防法上の危険物に当たります
流しやトイレなどに流してしまうと下水道管の中で火災が起きる可能性があるため、流さないでください。
前橋市は水道局から、もう一段具体的に呼びかけている。
新型コロナウイルス感染症の拡大とともに各ご家庭で購入した「アルコール消毒液」は揮発性が高く、引火しやすいため、台所や洗面台から流すと宅地内の配管や下水道本管の内部で引火する恐れがありますので絶対に流さないで下さい。
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