ペニシリンの作り方——スコッチ・レモン・蜂蜜に生姜、最後にアイラを浮かべる「8:3:3+1」の黄金比
2005年ニューヨーク生まれ、IBA公式にも載り、世界のトップバーの定番カクテル12位に入るスコッチのカクテル「ペニシリン」。黄金比8:3:3と最後に浮かべる1、家で作る手順、そして味を決めるベースとフロートの選び方を整理する。
バーのメニューに「ペニシリン」と書かれていたら、それは抗生物質の名を借りたスコッチのカクテルだ。ブレンデッドスコッチに蜂蜜と生姜とレモンを合わせ、最後にアイラのシングルモルトを表面へ浮かべる。
生まれたのは2005年。カクテルの歴史から見ればごく最近なのに、いまでは国際バーテンダー協会(IBA)が公式レシピとして載せ、世界のトップバーを対象にしたDrinks Internationalの2025年調査でも、定番カクテルの12位に入っている。生まれて20年ほどで「古典」の列に並んだ一杯だ。
この記事では、ペニシリンがどこで生まれたのか、家で作るときの黄金比と手順、そして味を大きく左右する「二本のスコッチ」の選び方を順に見ていく。
ニューヨークの小さなバーで生まれた「薬」
考案したのは、オーストラリア出身のバーテンダー、サム・ロス。当時ニューヨークで働いていた彼が、ロウアー・イースト・サイドの「ミルク&ハニー」で組み立てた一杯だ。
下敷きになったのは、同じ店で生まれた「ゴールドラッシュ」というカクテルだ。バーボンにレモン果汁とハニーシロップを合わせただけの、ウイスキーサワーの砂糖を蜂蜜に替えたような酒で、2001年にT.J.シーガルが考案したと伝えられている(2000年とする資料もある)。
ロスはそのベースをバーボンからスコッチに替え、生姜を足し、仕上げにアイラのシングルモルトを浮かべた。材料をひとつ足しただけに見えて、これで酒の性格はまるごと変わる。
では、なぜ「ペニシリン」なのか。蜂蜜・生姜・レモンという、風邪をひいた夜に頼りたくなる取り合わせから、薬になぞらえて名づけられたと説明されることが多い。ペニシリンを発見したアレクサンダー・フレミングがスコットランド出身であることも、スコッチの酒に薬の名を与える洒落として引かれる。実際に飲むと、ホットトディ(ホットウイスキー)を冷たくして煙をまとわせたような後味がある。
ミルク&ハニーは2013年に別の場所へ移り、ロスは同僚のマイケル・マキロイとともに、その旧店舗で「アタボーイ」というバーを開いた。店の名は変わったが、この一杯だけは世界中のバーに残った。
黄金比は「8:3:3」、最後に「1」
IBAが公式に載せているレシピは次のとおり。
- ブレンデッドスコッチ 60ml
- レモン果汁(生) 22.5ml
- ハニーシロップ 22.5ml
- 生姜の薄切り(25セント硬貨ほどの大きさ) 2〜3枚
- アイラのシングルモルト(IBAの指定はラガヴーリン16年) 7.5ml
数字が細かく見えるが、比率にすると 8:3:3、そして最後に1 という覚えやすい形になる。ベース8に対して、酸と甘みが3ずつ。浮かべる煙はたったの1だ。
作り方は次の5手順。
- シェイカーに生姜を入れ、ペストル(なければすりこぎの先)で軽く潰す
- フロート用のアイラ以外——ブレンデッドスコッチ、レモン果汁、ハニーシロップ——を注ぐ
- 氷を入れてシェイクする
- 冷やして氷を入れておいたオールドファッションドグラスへ、茶漉しを重ねたダブルストレインで漉し入れる
- アイラのシングルモルトを表面に浮かべる。ガーニッシュは生姜の砂糖漬け
生姜の繊維がそのまま口に入ると舌に残るので、4のダブルストレインは省かないほうがいい。
なお、IBAはハニーシロップの配合までは指定していない。蜂蜜3に対して湯1くらいの濃さに溶いておくと扱いやすい。
もう一つ、バーで広く使われているのが「ハニージンジャーシロップ」を作り置きする方法だ。蜂蜜と水を同量、そこへ薄切りの生姜を加えて煮立て、5分ほど煮出してから一晩冷蔵し、漉す。これを22.5ml使えば、生の生姜を潰す工程はまるごと省ける。ただし蜂蜜と水が1:1なので、3:1のシロップより甘さは穏やかになる。甘みが物足りなければ蜂蜜の比率を上げればいい。
ベースのブレンデッドをどう選ぶか
分量の半分以上を占めるのだから、ここが土台になる。個性の強いシングルモルトではなく、素直なブレンデッドを選ぶのがこのカクテルの作法だ。
まず、原典に近いレシピでよく名前が挙がるのがフェイマスグラウス。蜂蜜とレモンに素直に寄り添い、価格も手に取りやすい。迷ったらここから始めればいい。

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