マッカラン ダブルカスク12年 vs グレンドロナック12年——同じ「シェリー樽」でも、片方は“木”を、片方は“中に入っていた酒”を看板にしている
樽には「どんな木で組まれたか」と「何が入っていたか」の二つの顔がある。シェリーの二大定番は、マッカランが前者を、グレンドロナックが後者を看板にしている。設計思想の違いと、店頭での選び分けを整理する。
シェリー樽のシングルモルトを一本選ぼうとすると、たいてい最初に名前が挙がるのがこの二本です。ザ・マッカランと、グレンドロナック。どちらも「濃厚なシェリー」で語られ、どちらも定番は12年もの。棚では隣同士に並んでいることも珍しくありません。
ところが二本の説明書きを読み比べると、妙なことに気づきます。マッカランには「アメリカンオーク」「ヨーロピアンオーク」と、木の名前が書いてある。グレンドロナックには「ペドロ・ヒメネス」「オロロソ」と、シェリーの名前が書いてある。同じ「シェリー樽のウイスキー」を名乗りながら、味を説明するのに使う言葉がそもそも違うのです。
樽には「どんな木で組まれたか」と「何が入っていたか」の二つの顔があります。二つのブランドは、そのうちどちらを前面に出して味を語るかが正反対なのです。その違いが分かると、店頭でどちらを取るべきかも自然に決まります。
前提——いまの「シェリー樽」は、飲み終わった空き樽ではない
まず、両者に共通する土台から。
「シェリー樽で熟成」と聞くと、シェリーを詰めて出荷された樽が空になり、それを再利用している——という絵を思い浮かべる人が多いはずです。かつてはそのとおりでした。しかし1980年代にスペインで現地瓶詰めが義務づけられ、樽詰めでの輸出は事実上途絶えます。
いまスコッチの現場で使われる「シェリー樽」の多くは、ウイスキーのために新しく組まれ、シェリーを数年間注いで馴染ませた(シーズニングした)専用の樽です。中身のシェリーは飲用に回らないこともあります。詳しくはなぜ現代のシェリー樽は、わざわざシェリーで「仕込まれる」のかで扱いました。
つまりマッカランもグレンドロナックも、「空き樽を拾ってくる」のではなく「樽をあつらえる」時代の作り手です。ここまでは同じ。分かれるのは、あつらえた樽のどの側面を看板にするかです。
マッカランは「オークの樹種」を看板にしている
マッカランのラインナップを見ると、その思想がそのまま製品の分け方になっていることが分かります。
- シェリーオーク——シェリーで仕込んだ樽で熟成。18年以上ではヨーロピアンオークと明示される
- ダブルカスク——シェリーで仕込んだヨーロピアンオークとアメリカンオーク、2種の樽を組み合わせる
- トリプルカスク——さらにアメリカンオークのバーボン熟成樽を加える
シェリー樽であることは共通で、変わるのはオークの樹種と組み合わせ。ブランドの分類軸が「木」になっているわけです。この整理はマッカランの種類と選び方でも扱っています。
なぜ木で分けるのかというと、オークは樹種が違えば別の素材だからです。ヨーロピアンオークはタンニンが多く、渋みとスパイス、ドライフルーツの濃さを出す。アメリカンオークはバニラの香気成分に富み、甘さと丸みを与える。同じシェリーで仕込んでも、木が違えば出てくるものが違う(アメリカンオークとヨーロピアンオーク)。
ただし、樹種の明示は全レンジ一律ではありません。18年シェリーオークが「ヘレスのオロロソで仕込んだヨーロピアンオーク樽のみ」と言い切るのに対し、12年は公式には樹種を限定せず、流通向けの説明でも「主にヨーロピアンオーク」と“主に”が付きます。
樽そのものへ川上から投資するマッカランの姿勢についてはなぜマッカランは「シングルモルトのロールスロイス」と呼ばれるのかにまとめました。

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