ウイスキーとラムは何が違うのか——「12年」の数え方も、砂糖を足していいかどうかも、条文が分けている
どちらも樽で寝かせた琥珀色の蒸留酒。EUの規則では隣り合って定義されているのに、熟成年数の下限、ラベルの「◯年」が指すもの、砂糖を足していいかどうか——三か所だけ、扱いがはっきり分かれている。
バーの棚で、ウイスキーの隣にラムが並んでいる。どちらも樽で寝かせた琥珀色で、どちらもラベルに「12年」や「23」といった数字が刷られている。見た目だけなら、兄弟のようだ。
実際、EUの蒸留酒規則(2019/787)では、この二つは同じ附属書のなかに並んで定義されている。アルコールの添加は不可、着香も不可、カラメルは色調整にのみ使える——共通する縛りは多い。
添加物のルールがこれだけ揃っているのに、扱いがはっきり分かれる箇所が三つある。熟成に下限があるかどうか。ラベルの数字が何を指すか。そして、砂糖を足していいかどうか。
出発点が違う——ラムには「糖化」がいらない
その前に、造り始めの違いから。
ウイスキーの原料は穀物だ。大麦やトウモロコシに含まれているのはデンプンで、酵母はデンプンをそのままでは食べられない。だから麦芽の酵素でデンプンを糖に分解する「糖化」という工程が要る。EUの規則も、ウイスキーの定義に「麦芽の酵素で糖化され、酵母で発酵させた」穀物のもろみを蒸留したもの、とわざわざ書き込んでいる(他の天然酵素を併用することも認められている)。
ラムの原料はサトウキビだ。砂糖を作る過程で出る糖蜜(モラセス)やシロップか、サトウキビの搾り汁そのもの。どちらも最初から糖なので、糖化の工程がまるごと要らない。搾って、発酵させて、蒸留する。
麦芽を作り、粉砕し、糖化する——ウイスキーの前半戦にあたる工程が、ラムには存在しない。同じ蒸留酒でも、スタート地点がずれている。
「3年」の下限があるかないか
ひとつめの分かれ道は、熟成だ。
EUの規則では、ウイスキーは700リットル以下の木製樽で最低3年寝かせなければ「ウイスキー」と名乗れない。度数も40%以上と決まっている。さらに「スコッチウイスキー」を名乗るには条件が加わる。英国のスコッチウイスキー規則2009は、糖化から蒸留までをスコットランドの同一の蒸留所で行うことに加え、樽の材質をオークに限定し、熟成もスコットランド国内で行うことを求めている。
日本の場合、酒税法にはウイスキーの熟成年数の定めがない。そこを埋めているのが、日本洋酒酒造組合が2021年に定めた「ジャパニーズウイスキー」の表示基準だ。700リットル以下の木製樽で3年以上国内貯蔵、充填時のアルコール分は40度以上——EUとほぼ同じ線を引いている。ただしこれは法律ではなく業界の自主基準で、「ジャパニーズウイスキー」と表示する製品に掛かるものだという点は押さえておきたい。
一方、ラムにはこの下限がない。EUの規則にラムの最低熟成期間は書かれていないし、樽の指定もない。度数の下限は37.5%。だから蒸留したてを樽に入れずに瓶詰めしたホワイトラムも、堂々と「ラム」を名乗れる。
樽で寝かせることは、ウイスキーにとっては定義そのものだが、ラムにとっては選択肢のひとつにすぎない。
「12年」が指しているもの
ふたつめは、ラベルの数字だ。
ウイスキーの年数表記は厳格だ。EU規則の第13条第6項は、熟成期間や年数を表示できるのは「その酒のいちばん若いアルコール成分」を指す場合に限る、と定めている。加えて、熟成のすべての工程が加盟国の税務監督か、それと同等の保証がある監督の下で行われていることも条件だ。英国のスコッチウイスキー規則2009の第12条も同じ原則を採り、しかも年単位で表示せよと決めている。
つまり「12年」と書かれたブレンデッドスコッチは、8年の原酒がひとしずくでも入っていれば12年を名乗れない。どれだけ古い原酒を抱えていようと、ラベルに出せるのは最も若い原酒の年数だ。

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