ジャックダニエル vs メーカーズマーク——炭で仕上げるか、小麦に替えるか。甘さの作り方が違う二本
黒ラベルのジャックダニエルと、赤い封蝋のメーカーズマーク。どちらも「甘くて飲みやすい」と言われますが、片方は蒸留後の炭ろ過、もう片方はライ麦を小麦に替えた仕込みで、その甘さを作っています。造り・度数・飲み方の向き不向きまで整理します。
黒いラベルのジャックダニエルと、赤い封蝋のメーカーズマーク。スーパーの棚でもバックバーでも、どちらも「アメリカンらしい、甘くて飲みやすい一本」として紹介されることが多い二本です。
ところが並べて飲むと、甘さの手ざわりがまるで違います。しかもその違いは、造り手が対照的な選択をした結果です。ジャックダニエルは蒸留を終えたあとの工程で、メーカーズマークは仕込みの穀物で、それぞれ甘さの方向を決めています。どちらか一方しかやっていない、という話ではありません。あくまで「どこを主戦場にしたか」の違いですが、この一点を押さえると二本の性格がすっきり見えてきます。
出発点の違い——片方は「バーボン」ですらない
メーカーズマークはケンタッキー州ロレットのケンタッキー・ストレート・バーボン。ジャックダニエルはテネシー州リンチバーグのテネシーウイスキーです。
テネシーウイスキーは、2013年成立のテネシー州法(House Bill 1084)が、バーボンの要件に加えて州内での製造と炭ろ過を求めた区分です。ただし例外もあり、州内の小規模生産者プリチャーズには炭ろ過なしでの名乗りが認められています。
つまりジャックダニエルは、中身としてはバーボンの要件を満たしながら、あえて別の看板を掲げている一本です(この事情はジャックダニエルはバーボンじゃない?で詳しく扱っています)。
ジャックダニエルは「蒸留のあと」で味を決める
原料配合(マッシュビル)は、公式にトウモロコシ80%・大麦麦芽12%・ライ麦8%。バーボンの一般的な水準(70〜75%前後)と比べると、トウモロコシ比率はやや高めです。
ただ、ジャックダニエルらしさをつくっているのは配合よりも、蒸留を終えたあとの一手間のほうです。サトウカエデの炭を約3メートル(10フィート)積み上げた槽へ、原酒を数日かけて一滴ずつ通すチャコールメロウイング(リンカーン・カウンティ・プロセス)。創業者ジャック・ダニエル本人にウイスキー造りを教えたとされるニアレスト・グリーンは、この炭ろ過の名手であり、ジャックはその技を受け継いだと語られてきました。
もっとも、炭ろ過が味に何をしているのかは断言しにくい領域です。造り手は「メロウイング(まろやかにする)」と呼び、角の立った成分が落ちることでなめらかさが出ると説明しますが、どの成分がどれだけ除かれ、それが最終的な味にどこまで効いているのかについては懐疑的な見方も根強くあります(→なぜテネシーウイスキーは、樽に入れる前に「炭をくぐらせる」のか)。
少なくとも飲み手の実感としては、オールドNo.7の甘さは「引っかかりの少ない、するりとした甘さ」に寄っています。バニラやキャラメルを思わせる香りが、刺激をあまり伴わずに出てきます。

このコラムの関連
関連するボトル


次に読む

タリスカー vs ラフロイグ——スモーキーの二大巨頭、「潮と黒胡椒」と「薬品と煙」はどう違う?
「スモーキーの二大巨頭」タリスカーとラフロイグ。同じ煙でも、潮と黒胡椒のスカイ島と、薬品を思わせるアイラ島では質がまるで違う。生い立ち・度数・味を並べ、最初に選ぶべき一本を見極める。

キャンベルタウン・ウイスキー入門——蒸溜所3軒だけの最小産地、潮と油の個性と最初の一本
スコッチ最小の産地キャンベルタウン。3軒の蒸溜所から5つの銘柄が出る理由、産地らしい味の特徴、入手性を踏まえた最初の一本の選び方までを解説します。

ローランド・ウイスキー入門——軽やかさで知られる産地、二軒まで減って甦った歴史と最初の一本
スコッチ5大産地でいちばん語られない「ローランド」。法律の条文で引かれた境界線、青りんごのような軽やかさの理由、「三回蒸留の産地」という通説の実際、二軒まで減って20軒超に甦った復活劇、そして最初の一本の選び方まで。




