アイランズ・ウイスキー入門——法律にはない「6番目の産地」、島ごとに違う個性と最初の一本
スコッチの公式な産地は5つで、そこに「アイランズ」は入っていない。それでも棚に並ぶこの呼び名の正体と、スカイ・オークニー・マル・ジュラ・アランで驚くほど違う味、最初の一本の選び方。
バーやショップの棚、あるいはウイスキーの本を見ていると、「アイランズ」という区分に出会うことがある。タリスカー、ハイランドパーク、アラン——島で造られたシングルモルトをまとめてそう呼ぶ。
ところが法律上、スコッチに「アイランズ」という産地は存在しない。それでもこの呼び名は使われ続けている。この記事では、その事情を整理したうえで、島ごとにどう味が違うのか、そして最初の一本をどう選べばいいのかを案内する。
法律の地図に「アイランズ」はない
スコッチウイスキー規則(Scotch Whisky Regulations 2009)がラベル表示を認めている産地は5つ。範囲の広い「保護地域(protected regions)」としてハイランド・ローランド・スペイサイド、より狭い「保護地区(protected localities)」としてアイラ・キャンベルタウンだ。詳しくはなぜスコッチウイスキーは「5つの産地」に分けられるのかにまとめている。
つまりアイラを除く島々——スカイ、オークニー、マル、ジュラ、アランなど——は、法律の上ではすべてハイランドの一部として扱われる。「アイランズ」は公式の産地表示ではなく、造り手や売り手が便宜的に使う呼び名にすぎない。
では、なぜその呼び名が残っているのか。ひとつは、ハイランドという産地があまりに広く、内陸の蒸留所と海に囲まれた島の蒸留所を同じ言葉で語るのに無理があるからだ。もうひとつは、島にある蒸留所がたいてい一軒か二軒しかなく、「産地の味」ではなく「その島の味」として語りやすいからだ。
島ごとに、まるで性格が違う
「アイランズ」とひとくくりにされがちだが、中身は驚くほどばらばらだ。順に見ていこう。
スカイ島の顔は、1830年創業のタリスカー。黒胡椒を思わせるスパイシーな刺激と潮気が同居する、島モルトの代名詞的な一本だ。
この島には190年近くタリスカーしかなかった。2017年に蒸留を始めたトラベイグが、スカイ島で2軒目の公認蒸留所である。
オークニー諸島でよく知られるのは、対照的な二軒だ。ハイランドパークは、いまも麦芽の2割ほどを自社のフロアモルティング(麦芽を床に広げ、手作業で返す昔ながらの製麦)でまかない、島のホビスター・ムーアで切り出したピートで乾燥させる。木の生えない土地のピートはヘザーなど低い植生が主体で、のような薬品的な煙にはならず、花を思わせる甘い燻香になる。
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