ウイスキーとジンは何が違うのか——条文は片方に「足すな」と書き、もう片方に「何を足せばよいか」を書いている
同じ穀物から造れて、同じ建物で並んで造られることもある二つの酒。EUの条文はウイスキーに「足すな」を並べ、ジンには「何を足せばその名前で呼べるか」を書く。ところが日本の酒税法を開くと、その立場はねじれる。
同じ棚に、ウイスキーとジンが並んでいる。どちらも穀物から造ることができて、度数も40度前後。造り手が同じどころか、同じ建物から出てくることすら珍しくない。
それでも、この二つを定めた条文を並べて読むと、書かれ方が逆を向いていることに気づく。ウイスキーの条項は後半が「してはいけない」で埋まっていて、ジンの条項は「これを足す」から始まっている。
ウイスキーの条文は、後半が禁止で埋まっている
EUの蒸留酒規則(2019/787)の付属書I、カテゴリ2「ウイスキー」を開くと、前半は造り方の指定だ。麦芽の酵素で糖化した穀物を——未発芽の穀物を混ぜてもよい——酵母で発酵させ、94.8%未満で蒸留する。容量700リットル以下の木樽で3年以上熟成させる。製品のアルコール分は40%以上。
そして後半が、この酒の性格を決めている。甘味を加えてはならない。香味を加えてはならない。アルコールの添加も、薄めたものであっても認められない。加えてよいのは水と、色調を整えるためのプレーンカラメル(E150a)だけである。
つまりウイスキーは、蒸留を終えたあとに「何かを足して良くする」ことを、制度の側からほぼ封じられている。色は微調整の余地が残されているが、バニラやドライフルーツを思わせる甘い香りのほうは、樽と時間が置いていったものしかありえない。造り手にできるのは、樽を選び、置き場所を選び、あとは待つことだ。

ジンの条文は、「足す」ところから始まる
同じ付属書のジンは、三段構えになっている。
カテゴリ20の「ジン」は、農産物由来のエチルアルコールを、ジュニパーベリー(セイヨウネズの実)で香りづけしたもの。使ってよいのは香料および香料調製品で、味の主役がジュニパーであること。アルコール分は37.5%以上。——蒸留せよ、とは書かれていない。この条件を満たす形で香りを足せば、その時点でこの名前を使える。
蒸留を求めるのは、次のカテゴリ21「蒸留ジン」からだ。当初のアルコール分が96%以上ある農産物由来のエチルアルコールを、ジュニパーや他の植物とともに蒸留すること。そして「エチルアルコールにエッセンスや香料を加えただけのものは、蒸留ジンとみなさない」と、わざわざ念を押している。
いちばん厳しいのがカテゴリ22の「ロンドン・ジン」で、香りは蒸留によってのみ与え、着色してはならず、甘味も最終製品1リットルあたり転化糖換算で0.1グラムを超えてはいけない。
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