なぜ南アフリカのウイスキーは、40%ではなく43%だったのか——条文に居座り続けた3ポイントと、2025年に消えた線
南アフリカでは長く、ウイスキーは43%以上でなければ「ウイスキー」と名乗れなかった。条文を開くと、その数字はウイスキーのために引かれた線ではなかった。そして2025年3月、線そのものが消えた。
世界のウイスキーは、40%が標準だ。その数字は第一次大戦下のイギリスの戦時統制から来ていて、スコッチもEUもアメリカも、法律上の下限は40%に揃っている。
ところが南アフリカだけ、長いあいだ3ポイント高いところに線を引いていた。43%。この国で「ウイスキー」と名乗るには、43%以上でなければならなかった。ベインズ ケープマウンテンが43%だったのも、スリーシップスのセレクトが43%だったのも、造り手の趣味ではなく条文の要求だった。
そして2025年3月、その線は消えた。
なぜ43%だったのか。答えを探して条文を開いてみると、その数字はウイスキーのために引かれた線ではなかった。そして消えた理由も、味とは何の関係もなかった。
規則15には、三つの要件が書いてあった
南アフリカで酒類の中身を決めているのは、酒類製品法(Liquor Products Act 60 of 1989)と、その下の規則R1433(1990年6月29日公布)である。この規則の15番目が「ウイスキーの要件」だ。書いてあるのは三つ。
- 穀物のもろみを、麦芽の酵素などで糖化し、酵母で発酵させ、94.8%未満で蒸留すること(原料由来の香味が残るように)
- 容量700リットル以下の木樽で、3年以上熟成させること
- アルコール分が43%以上であること
上のふたつは、スコッチを知っている人なら見覚えがあるはずだ。94.8%という蒸留上限も、700リットル以下の樽も、3年以上という熟成期間も、スコッチウイスキー規則とほぼ同じ設計になっている。南アフリカ国内で造る場合は、さらに保税倉庫に置くことまで求められた。
違うのは三つ目だけだった。スコッチは40%、南アフリカは43%。
続く規則16は「モルトウイスキー」で、麦芽だけのもろみをポットスチルで蒸留することを要件に加える。規則17は「ブレンデッドウイスキー」で、こちらには配合の規定がある——純アルコール換算でモルトウイスキーが25%以上、グレーン側が75%以下。スコッチウイスキー規則にはない縛りだ。
そしてどの区分も、最後の一行は同じだった。43%以上。ジェームズ・セジウィック蒸溜所のマスターディスティラー、アンディ・ワッツも2016年のインタビューで、三つの区分すべてが「最終的な瓶詰め時に43%以上」を求められると説明している。
43%は、ウイスキーだけの数字ではなかった
ここで手を止めずに、同じ規則集を先へ読んでみる。すると、同じ数字が延々と出てくる。
ブランデー43%。ハスクスピリッツ(ブドウの搾りかすの蒸留酒)43%。ケーンスピリッツ43%。ラム43%。ジン43%。ウォッカ43%。区分の定まらない「アンスペシファイド・スピリッツ」も43%、複数の原料を混ぜた「ミックスド・スピリッツ」も43%。
つまり43%は、南アフリカにおける蒸留酒全般の下限であって、ウイスキーだけが高い線を課されていたわけではなかった。この国で蒸留酒を名乗るなら43%から、というのが出発点だったのである。
しかも、この数字はかなり古い。ウォッカやミックスド・スピリッツのように、1990年の公布から一度も差し替えられていない条文も43%のまま残っていた。43%は、規則そのものと同じくらいの年季が入っていたことになる。
一方で、その一律の線より下に置かれていた区分もあった。ポットスチルブランデーは38%、ヴィンテージブランデーも38%、2006年に新設されたプレミアム・ハスクスピリッツは40%。いずれもブドウの酒である。ワインの国は、自国の主役には最初から別の目盛りを用意しており、2006年にもうひとつ足した——そう読める並びだ。ウイスキーには、その例外がついに用意されなかった。
念のため付け加えると、これは「43%がブランデーのために引かれた線だった」という話ではない。むしろ逆で、ブランデーの一部がその線から免除されていた、というだけのことである。
その数字は、どこから来たのか
条文は理由を書かない。ただ、43%という数字自体は南アフリカの発明ではない。
かつてイギリスが使っていた「プルーフ」という物差しでは、100度(プルーフ)がアルコール分57.15%にあたる。この目盛りで割り戻すと、**70度がちょうど40%、75度が約42.86%——つまり43%**になる。40%と43%は、まったく別の発想から出た数字ではなく、同じ英国式の物差しの、隣り合った刻みなのだ。
英『ウイスキーマガジン』は、43%が「エクスポート・ストレングス」と呼ばれる度数であり、スコッチが伝統的にこの強さで世界へ送り出されてきたと説明している。旧英領だった南アフリカが、輸出用として世に出回っていたこの刻みを自国の下限に据えた、と見るのは自然だろう。ただし、条文にそう書いてあるわけではない。ここは推測として受け取ってほしい。
線の内側で育った、一軒の蒸溜所
南アフリカのウイスキーの本拠地は、西ケープ州ウェリントンにあるジェームズ・セジウィック蒸溜所という一軒だ。リミエット山地のふもと、ベルグ川のほとりに建っている。
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