カリラ12年 vs ラガヴーリン16年——同じ島・同じ会社・ほぼ同じ煙の麦芽から、なぜ味も値段も分かれるのか
アイラの隣人どうしでありながら、味も値札も違う二本。麦芽の煙の濃さはほぼ同じで、分かれ目は蒸溜の「切り方」と「回す速さ」にある。値段差の正体と、いまどちらを買うべきかまで。
アイラの棚の前で、迷う組み合わせがある。カリラ12年と、ラガヴーリン16年だ。
同じ島で造られ、同じ会社が持ち、煙のもとになる麦芽は同じ製麦所から、ほぼ同じ仕様で届く。それなのに、片方は「まず試す一本」の値札で、もう片方はひとつ上の段に置かれている。飲めば飲んだで、煙の出方がまるで違う。
この二本の差は、どこで生まれているのか。そして、いま自分が買うべきなのはどちらなのか。順番に見ていく。
出発点は、拍子抜けするほど同じ
まず、揃っているものを確認しておきたい。
持ち主が同じ。カリラもラガヴーリンも、1997年からディアジオの傘下にある。棚の上ではまったく別のブランドとして売られているが、資本の上では兄弟だ。
麦芽の出どころも同じ。二軒とも、島の南岸ポートエレンにある製麦所から麦芽を受け取ってきた。この工場もディアジオが持っている。ピートを焚く仕様の場合、ラガヴーリンとカリラはどちらも35ppm前後——語られている数字を並べるかぎり、ほぼ同じ濃さの煙を注文している(→なぜアイラの蒸溜所は、ライバルの工場から麦芽を買い続けたのか)。
念のため補足しておくと、このppmは麦芽の段階で測った値で、グラスの中の煙の強さではない。数字の大半は蒸溜までに失われる(→ppm(フェノール値)とは)。
つまり、原料の煙の量という点では、二本はほとんど同じ地点から出発している。にもかかわらず、着地はまるで違う。差がついているのは、麦芽より後ろの工程だ。
面白いのは、その差が「秘伝」めいた何かではなく、わりあい説明のつく数手で決まっていることである。
カリラは、煙の重い部分を置いてきている
専門誌『Scotch Whisky』の蒸溜所解説は、この点をはっきり書いている。カリラは姉妹蒸溜所であるラガヴーリンと同じ仕様の麦芽を受け取りながら、より長い発酵、より高いカットポイント、より背の高いスチルという組み合わせによって、重いフェノールを減らしている——と。
三つのうち、いちばん効き目が想像しやすいのはカットポイントだろう。
蒸溜器から出てくる液体は、最初から最後まで同じではない。序盤に軽く華やかな成分が出て、後半になるほど重く、油っぽく、煙っぽい成分が混じってくる。造り手はこの流れのどこからどこまでを製品に使うかを決める。これがスピリッツカットだ(→スピリッツカット(初留・中留・後留))。
「カットポイントが高い」とは、まだアルコール度数が高いうちに採取をやめる、という意味である。つまり後半の重い部分に手を伸ばさず、早めに切り上げる。煙の中でも重たい側は、まさにその後半に出てくる。
背の高いスチルも同じ方向に働く。背が高いほど、蒸気は上がりきる前に液体へ戻される量が増える。軽い成分だけが選ばれて出ていく仕組みだ(→スチルの形状と還流)。
同じ35ppmの麦芽を受け取りながら、カリラは煙のうち重たい側を置いてきているわけだ。
ちなみにこの蒸溜所は、年産能力およそ650万リットルとアイラで最大で、島のほかの蒸溜所を大きく引き離している。スチルは6基。設備の規模だけを見れば、島でいちばん「工場らしい」一軒でもある。
結果として立ち上がるのは、洋梨のような果実感、青さ、ジュニパーを思わせる清涼感、そして海辺の気配——ロブスターの殻や蟹籠と評される潮っぽさに、穏やかな煙が重なる。煙は確かにあるのに、輪郭が涼しい。アイラの煙が苦手だと思っていた人が、カリラだけは飲めた、という話をよく聞くのはこのためだ。

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