なぜバーボンの熟成庫は、いまも木で組まれているのか——12日を置いて二度崩れた倉庫と、木が受け止める4,500トン
ケンタッキーのバーボンは、空調も断熱もない7階建ての木造倉庫で眠る。2018年、その一棟が12日を置いて二度崩れ、計1万8,000樽が落ちた。それでも新しい熟成庫が木で建てられ続けるのはなぜか。
2018年6月22日、ケンタッキー州バーズタウン。バートン1792蒸留所の「30番倉庫」が、半分だけ崩れ落ちた。中で眠っていたのは、およそ9,000樽のバーボンである。
12日後の7月4日、独立記念日。残っていた半分も落ちた。さらに約9,000樽。合わせて1万8,000樽ぶんの建材と樽とウイスキーが、山になった。どちらのときも中に人はおらず、けが人は出ていない。
事故としては、それで終わる話だ。ただ、崩れた現場の写真を見た人の多くが、同じところで引っかかった。あの巨大な倉庫は、木で組まれている。
7階建ての建物に、数千トンの樽とウイスキー。それを木の梁で受けている。なぜ、そんな造りなのか。そして崩落を経たいまも、新しい熟成庫が木で建てられ続けているのは、なぜなのか。
バーボンは「木の棚」に横たわって眠る
アメリカでバーボンを寝かせる建物をリックハウスと呼ぶ。
ヘヴンヒルが自社の熟成庫について書いているところでは、リックハウスは木の骨組みを持つ、たいてい7階建ての建物で、外壁と屋根には波板の金属が張られる。各階には木で組んだ棚——これがリック(rick)——が並び、樽はその上に横倒しで、3段に積まれる。いったん置かれた樽は、出荷までほとんど動かされない。
この「棚に載せる」という発想には、発明された日付がある。ケンタッキー州ルイビルのフレデリック・スティッツェルが1879年8月22日に出願し、同年11月25日に特許221,945号として認められた "Improvement in Racks for Tiering Barrels"——柱に横木を渡し、各段の樽を独立して支えることで、下の樽に上の重さを載せない仕組みだ。この一枚の図面がなぜ生まれたのかは、樽の向きの話として別の記事に書いた(なぜウイスキーは、瓶なら立てて保存するのに、樽では横に寝かせるのか)。
ここで見たいのは、その先である。19世紀に生まれた棚の考え方が、そのまま7階建ての木造建築として21世紀まで立っている——という事実のほうだ。
そして、その建物には空調も断熱もない。エライジャクレイグの熟成庫の説明はきっぱりしている——うちのリックハウスは空調も断熱も一切していない、庫内が暑くなるか寒くなるかは自然だけが決める、と。同社によれば庫内の温度は、わずか9か月のあいだに冬の0°F(約マイナス18℃)以下から夏の100°F(約38℃)超まで振れる。
その振れ幅こそが、バーボンを速く、濃く育てる装置になっている(なぜ同じ日に詰めた樽が、倉庫の「何階に置かれたか」で別の酒になるのか)。スコットランドの熟成庫が、土間に低く積むダンネージ式と鉄骨に高く積むラック式に分かれるのとは、そもそも発想が違う(なぜ同じ蒸留所でも「熟成庫」の違いでウイスキーの味が変わるのか)。

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