ウイスキーは家で混ぜてもいいのか——自分だけのブレンドの作り方と、酒税法が引いている線
棚の飲みかけを2本混ぜたら、どうなるのか。そしてそれは法律上ゆるされるのか。酒税法の条文をたどると、ウイスキー同士・水や炭酸・品目の違う酒で、根拠になる条文が違うと分かる。家でブレンドを試す手順と、味の見当のつけ方まで。
棚に、飲みかけのボトルが何本か並んでいる。よく開ける一本はそろそろ飲み飽きてきた。もらいものの一本は個性が強すぎて減らない。——この二本を混ぜたら、どうなるのだろう。
そう思いついたとき、たいていの人はもう一つのことを考える。そもそも、家でお酒を混ぜてしまっていいのだろうか。
日本では、家庭でウイスキーを造ることはできない(→なぜ日本では家でウイスキーを造れないのか)。では「混ぜる」はどうなのか。この記事ではまず酒税法の条文でそこをはっきりさせ、そのうえで家でブレンドを試す手順と、味の見当のつけ方までを整理する。
結論——ウイスキー同士の混和は、条文が明文で外している
酒税法には「みなし製造」という規定がある。第43条第1項は、こう書いている。
酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。ただし、次に掲げる場合については、この限りでない。
酒に何かを混ぜたら、新しく酒を造ったのと同じ扱いにする、という趣旨だ。ここだけ読むと不安になるが、鍵は括弧の中にある。「当該酒類と同一の品目の酒類を除く」。
酒税法でいう「品目」とは、第3条第7号から第23号までに挙げられた酒類の区分のことで(第7条第1項)、ウイスキーはその第15号にあたる。つまりウイスキーとウイスキーは、同じ品目だ。混ぜる相手として第1項が挙げている「水以外の物品」から、同じ品目の酒類は最初から除かれている。立法者がうっかり見落としたグレーゾーンではなく、明文で外されているということである。
ただし書きの各号を見ると、もう一つ分かることがある。第一号・第二号・第五号が「清酒の製造免許を受けた者が」「酒類製造者が」と主体を限っているのに対し、第三号(連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎の混和)と第四号「ウイスキーとブランデーとの混和をしたとき」には、主体の限定がない。品目の違うこの組み合わせが、造り手に限らず外れていると読める根拠である。
なお、混ぜたものを売ることはできない。酒類の販売業免許という別の話があり、ここで扱っているのはあくまで自分が飲むための一杯である。
「水を足す」と「炭酸で割る」は、別々の条文で扱われている
面白いのはここからだ。水割りとハイボールでは、根拠になる条文が違う。
まず水。第43条第5項はこう定める。
第一項の規定にかかわらず、酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は、新たに酒類を製造したものとみなす。
除外される「政令で定める場合」を、酒税法施行令第50条第7項第1号が定めている。蒸留酒類と水を混ぜて混和後のアルコール分が20度以上(ウイスキー・ブランデー・スピリッツの場合は37度以上)の酒類としたとき、である。40度のウイスキーを水で割って15度の水割りにすれば37度を下回るので、条文の形のうえでは第5項に当てはまってしまう。
炭酸は、これとは入り口が違う。酒税法は「水」と「炭酸水」を書き分けており(第43条第8項や施行令第50条第9項以下は「水又は炭酸水」と併記する)、炭酸水は第5項の「水」ではなく、第1項の「水以外の物品」として扱われる。実際、第43条第2項は「前項の場合において」——つまり第1項の場合として——酒類に炭酸ガス(炭酸水を含む)を混和したときの品目を定め、混和前の品目のままとしている。ハイボールは度数にかかわらず第1項の話で、できあがったものの品目はウイスキーのまま、ということになる。
とはいえ、家の水割りやハイボールが違法なはずはない。入り口は分かれても、出口は同じだ。救っているのは第43条第10項である。
前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。
その「政令で定めるとき」を、施行令第50条第13項が定義している。酒場や料理店など、酒類を専ら自己の営業場で飲用に供することを業とする者が消費者の求めに応じて混ぜるとき、または「酒類の消費者が自ら消費するため」に混ぜるときだ。バーテンダーのカクテルも、あなたのハイボールも、ここで外れる。
ここから、実務的な線が三本引ける。
- ウイスキー同士は、第1項の括弧書きにより最初から対象外。だから小瓶に移して何日か置いても、この規定の話にはならない。ウイスキーとブランデーの組み合わせも、第四号で同じく外れている。
- 水や炭酸を足すほうは、第10項の「消費の直前」という条件に支えられている。だから割るのは飲む直前にする。作り置きのハイボールを何日も冷蔵庫に寝かせる、という発想はここでは採らない。
- 品目の違う酒——ラム、ジン、リキュール、シェリーなど——を足す場合も、よりどころは同じく第10項の「消費の直前」しかない。その場で作って、その場で飲むものと考える。
覚え方は単純だ。寝かせていいのはウイスキー同士。水も炭酸も、ほかの酒も、グラスの中で。 これは味の理屈からしても正しい(→、)。
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