知多 vs ニッカ カフェグレーン——定価は同じ6,600円。味を分けているのは「蒸溜塔を何本通すか」で、2022年に知多もカフェ式を導入した
日本を代表するグレーンウイスキー二本は、原料も蒸溜方式の大分類も同じで定価まで同額。それでも味が分かれるのは、もろみを何本の蒸溜塔に通すかが違うから。造りの違いと、2022年に知多が入れたカフェ式、度数・実勢価格・飲み分けまで整理する。
酒屋の棚に、日本のグレーンウイスキーが二本並んでいることがある。サントリーの「知多」と、ニッカの「カフェグレーン」だ。
どちらも単一の蒸溜所で造られたグレーンウイスキーで、主原料はどちらもトウモロコシ。どちらも連続式蒸溜機から生まれる。参考小売価格にいたっては、二本ともぴったり同じ6,600円(税込)である。
それなのに、グラスに注ぐと印象がかなり違う。知多はすっと消えていくような軽さで食事に寄り添い、カフェグレーンは蜂蜜やバニラを思わせる甘さがグラスに残る。
この差はどこから来るのか。答えは原料でも樽でもなく、もろみを何本の蒸溜塔に通すかという、きわめて即物的なところにある。そして2022年、知多蒸溜所はこの「塔の本数」に、これまでにない選択肢をひとつ加えた。
まず、二本が共有しているもの
「シングルグレーン」の"シングル"は、穀物が一種類という意味ではない。単一の蒸溜所で造られたグレーンウイスキーという意味だ。だから中身に何種類の原酒が入っていても、同じ蒸溜所のものであれば矛盾しない(区分そのものの整理はシングルグレーンウイスキーとはにまとめている)。
そのうえで二本に共通するのは、次の三つだ。
- 主原料がトウモロコシなどの穀物であること
- 連続式蒸溜機で蒸溜されること
- もともとはブレンデッドウイスキーの土台を担ってきた原酒であること
知多蒸溜所のグレーン原酒は「響」「角瓶」を支え、宮城峡のカフェグレーンはニッカのブレンデッドの土台になってきた。どちらも長いあいだ、単体で瓶詰めされることのない裏方だった。
連続式蒸溜機は、いくつもの蒸溜塔をつないだ装置だ。もろみを通す塔が増えるほどアルコールの純度は上がり、そのぶん原料由来の香味成分は削られていく。この仕組みそのものはなぜグレーンウイスキーは軽いのかで書いた。
共通点はここまで。分かれ道は、この「何本通すか」にある。
カフェグレーンは、二本しか通さない
ニッカがカフェグレーンに使うのは、「カフェ式連続式蒸溜機(カフェスチル)」と呼ばれる装置だ。1830年に連続式蒸溜機の特許を取ったエニアス・コフィーの名に由来する(ニッカの表記は「イーニアス・カフェ」)。コーヒーとは関係がない。
カフェ式は、もろみ塔と精留塔だけの二塔構成である。ニッカ自身がこう説明している——現在主流の連続式蒸溜機はアルコールの精製度を高められる反面、香味成分までも除去してしまう。いっぽう旧式で蒸溜効率の劣るカフェ式は、蒸溜液に原料由来の香りや成分がしっかり残る。
つまり、カフェグレーンの甘さは、あとから足したものではない。削らずに残したものである。
竹鶴政孝がこの蒸溜機を導入したのは1963年。前年の欧州視察で買い付けたもので、ニッカ自身が「当時としても"極めて旧式"」と認める装置だった。効率を捨てて風味を取る、という判断である。据え付け先は当初、西宮工場だった。仙台工場(宮城峡蒸溜所)へ移されて現在の場所で動き始めたのは1999年のことで、いまも現役だ(蒸溜所の成り立ちはなぜ宮城峡はニッカの"やさしい"モルトなのかへ)。
商品としてのカフェグレーンは、2012年にフランスを中心とした欧州で先行発売され、日本の棚に並んだのは2013年6月11日。ブレンデッドの土台だった原酒が、単体の商品として国内デビューした形になる。
公式のテイスティングは「ウッディさと甘いバニラ香、チョコレートを思わせるスイートな香り」「蜂蜜のようななめらかな口当たり」「軽快なボディ」。甘い香りは濃いのに、ボディそのものは重くない——この組み合わせがこの一本の個性だ。

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