白州と宮城峡は何が違うのか——どちらも「二つ目のモルト蒸溜所」。炎と煙を残した白州、蒸気で削った宮城峡
森の白州と霧の谷の宮城峡。どちらもサントリーとニッカが「一つ目と違う原酒」を求めて建てた二つ目のモルト蒸溜所で、どちらも軽やかと言われます。ただ、軽さの作り方は対照的。加熱・スチル・発酵槽・ピートの四つの分かれ道から、味の違いと選び方を整理します。
サントリーの白州と、ニッカの宮城峡。どちらも「軽やかで飲みやすいジャパニーズのシングルモルト」として名前が挙がり、メーカーの参考価格もほぼ同じ価格帯に並びます。森の蒸溜所と、霧の谷の蒸溜所。イメージまでよく似ています。
けれど、二本を並べて飲むと、方向ははっきり違います。白州は青々しくて、奥にかすかな煙がある。宮城峡は果実のように甘く、やわらかい。
この記事では、まず二つの意外な共通点を確認し、そのうえで設備の違いを四つの分かれ道として整理します。最後に、どちらを選べばいいかまで案内します。
共通点——どちらも「二つ目のモルト蒸溜所」だった
宮城峡が生まれたのは1969年、白州は1973年。わずか4年違いです。そしてどちらも、それぞれの会社にとって二つ目のモルト蒸溜所でした。
ニッカは、北海道の余市に続く蒸溜所として宮城峡を建てました。サントリーは、山崎から半世紀後の二つ目として白州を建てています。
狙いも同じでした。一つ目と違う原酒を手に入れることです。日本では、他社と原酒を融通し合う習慣がほとんどありません(→なぜ日本の蒸溜所は原酒を交換しないのか)。ブレンドに幅を持たせるには、性格の違う原酒を自社で造り分けるしかない。だから二社とも、二つ目は一つ目と対になるように設計されました。
重厚な余市の対として、宮城峡。重厚な山崎の対として、白州。どちらも「軽やか」と呼ばれるのは、この生い立ちから見れば自然なことです。
結論から——同じ「軽やか」でも、作り方が違う
違いは、軽さの作り方にあります。先に全体像を示しておきます。
| 白州 | 宮城峡 | |
|---|---|---|
| 創業 | 1973年 | 1969年 |
| 初留の加熱 | ガスの直火 | 蒸気の間接加熱 |
| ポットスチル | 16基(ストレート型とランタン型の混成) | 8基(すべてバルジ型) |
| 発酵槽 | 木桶(ベイマツ)18基 | ステンレス22基 |
| 麦芽のピート | ノンピート〜40ppm | ノンピート〜4ppm程度 |
| ノンエイジの度数 | 43% | 45% |
ひとことで言えば、白州は炎と木と煙を残したうえでの軽さ、宮城峡は蒸気と還流で削り出した軽さです。
分かれ道① 炎で焚くか、蒸気で焚くか
白州の初留釜は、ガスの直火で焚かれています。「森の蒸溜所」の爽やかな印象からは意外ですが、蒸溜所の設備資料にはそう記されています。炎で直接あぶると、釜の底でもろみの成分が焦げるほど熱され、香ばしさやコクが生まれます(→なぜ直火焚きのウイスキーは香ばしく重厚になるのか)。
一方の宮城峡は、初留・再留とも蒸気による間接加熱です。熱のムラが少なく、穏やかに蒸溜できます。ニッカは石炭直火の余市と正反対の方式を、二つ目のモルト蒸溜所であえて選びました。
分かれ道② 形を混ぜるか、形をそろえるか
白州のポットスチルは16基。初留はストレート型5基とランタン型3基、再留はストレート型6基とランタン型2基という混成です。形が違えば、生まれる原酒の重さも変わります。一つの蒸溜所の中で、重めの原酒と軽めの原酒を造り分けているわけです。
宮城峡のポットスチルは8基で、すべてバルジ型です。首の付け根がふくらみ、蒸気を導くラインアームは上を向いています。この形では、重い成分が途中で冷えて釜へ戻る「還流」が起きやすく、軽く繊細な成分だけが上まで抜けていきます(→なぜポットスチルの形で酒質が変わるのか)。
分かれ道③ 木桶か、ステンレスか
発酵槽にも差があります。白州は北米産ベイマツ(ダグラスファー)の木桶を18基使います。宮城峡はステンレスの槽が22基です。
木桶には乳酸菌などが住み着き、発酵の後半に酸や複雑な香りを足すと言われます。ステンレスは洗いやすく、狙わない菌の影響を受けにくい(→なぜ発酵槽は「木製」と「ステンレス」で分かれるのか)。ここでも白州は複雑さを足す側、宮城峡はきれいに整える側に立っています。
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