日本のクラフトウイスキーの選び方——大手以外の蒸溜所から、自分の一本を見つける
山崎も白州も手に入りにくい今、選択肢になるのが小さな蒸溜所の一本。厚岸・桜尾・遊佐・嘉之助・三郎丸・静岡を味と造りの方向から整理し、買う前に知っておきたい前提と手頃な入口まで案内する。
「山崎」も「白州」も、店の棚では見かけない。見かけても、値札が記憶の倍になっている。——そんな状況が続くなかで、現実的な選択肢として浮かび上がってきたのが、大手以外の小さな蒸溜所、いわゆるクラフトの一本だ。
計画中のものまで含めれば、日本の蒸溜所は100を超える(なぜいま小さな蒸留所が増えているのか)。ただ数が増えた結果、「聞いたことのない名前ばかりで選べない」という新しい悩みも生まれた。この記事では、クラフトを買う前に知っておきたい前提と、味と造りの方向から選ぶ道筋を整理する。
買う前に知っておきたい3つのこと
1. 多くは「若い酒」である。 2016年前後に蒸溜を始めた蒸溜所が多く、熟成年数はまだ長くない。長熟の落ち着きよりも、若さゆえの香りの立ち上がりと勢いが持ち味だと考えたほうがいい。
2. 定番より「その回だけ」のボトルが多い。 生産量が小さいため、数量限定・年一回といったリリースが中心になる。過去のボトルは二次流通で値が跳ね上がりがちなので、旧作を追いかけるより最新のリリースを狙うか、バーで一杯試してから決めるほうが現実的だ。
3. ラベルの言葉で選び分ける。 その蒸溜所の素の味を知りたいなら「シングルモルト」表記。価格を抑えて雰囲気から入りたいなら、同じ造り手のブレンデッドが入口になる。ただしブレンデッドには海外原酒を組み合わせた「ワールドブレンデッド」も多く、これはこれで良質だが、「ジャパニーズウイスキー」を名乗れる条件とは別の枠だと知っておきたい。
煙が好きなら——厚岸
北海道の厚岸蒸溜所は、アイラ島のウイスキー造りを手本に2016年に蒸溜を開始した。厚岸湾から2kmほど入った湿地帯にあり、夏でも海霧が立ち込める。看板は日本の四季を題材にした「二十四節気」シリーズで、節気の名を冠したボトルが継続的に出る(シングルモルトの回とブレンデッドの回がある)。ピートの煙と潮っぽさが同居する方向性だ。各回とも数量限定なので、旧作は入手が難しい。

土地と環境で選ぶなら——桜尾・遊佐・嘉之助
広島の桜尾蒸溜所を営むサクラオブルワリーアンドディスティラリー(サクラオB&D)は、「桜尾」と「戸河内」という二つのシングルモルトを出している。どちらも蒸溜するのは同じ桜尾蒸溜所で、違うのは寝かせる場所だ。前者は瀬戸内海に面した蒸溜所で、後者は中国山地の戸河内(現・安芸太田町)に残る旧鉄道トンネル跡の熟成庫で熟成される。同じ原酒でも、置き場所で表情が変わる。
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