
Roasted Malt
麦芽を高温で焙煎して香ばしさとコクを引き出す工程で、ビール醸造の技法を応用した比較的新しい試み。
通常のウイスキー用麦芽はピートまたは無煙で乾燥させるのに対し、ロースト麦芽はビール醸造で使われるチョコレートモルトやブラックモルトのように麦芽自体を高温で焙煎し、コーヒーやカカオ、ビスケットのような香ばしい風味とダークな色合いを麦汁に与える。糖化酵素が加熱で失活するため、通常は数パーセントを通常麦芽にブレンドして使う。伝統的なスコッチの製法にはあまり見られないが、クラフト蒸留所やビール文化の強い地域(ベルギー・アメリカのクラフト系)で、ビール由来の技法をウイスキーに応用する動きの一つとして採用が広がっている。 焙煎の度合いによって得られる香りの系統も変わり、浅煎りはビスケットやトフィー、深煎りはエスプレッソやダークチョコレートに近い香ばしさになる。通常の乾燥麦芽と組み合わせることで糖化に必要な酵素力を確保しつつ、独自の風味を加える設計が一般的。

グラスのビールと琥珀色のウイスキー。見た目も飲み口もまるで別物なのに、じつは大麦・水・酵母というほぼ同じ原料から生まれる兄弟だ。蒸留する前のウイスキーは「ホップを入れないビール」——両者を分かつホップ・蒸留・熟成という三つの分岐点を読み解く。

バレンタインの定番、ウイスキーとチョコ。強い酒と甘い菓子という一見ちぐはぐな組み合わせが、なぜ驚くほど調和するのか。焙煎と樽熟成が生む「共通の香り」、油分が果たす意外な役割、そして相性を外さないための三つの原則を読み解く。

スタウトの香ばしさを生むチョコレートモルト。同じ大麦麦芽なのに、ウイスキーではほとんど使われない。その背景にある酵素という壁と、あえて焦がすグレンモーレンジィ・シグネットやアードベッグ・アードコアの選択を読み解く。

市販ウイスキー14本を官能評価と化学分析にかけ、マンゴー香の弱い一本に加えて確かめる。そうして挙がった三つは、アルデヒド二つとアセタール一つだった。どれも単体では、誰も「マンゴー」とは呼んでいない。